茶園内での局所管理技術によるナガチャコガネの効率的防除

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要約

ナガチャコガネは茶園内で集中的に分布しており、毎年ほほ同じ個所に被害が現れる。このため、被害個所を局所的に防除することで、農薬投与量を削減できる。被害個所の検出と位置の記録は透過型マイクロ波水分計とGPSを搭載した乗用型摘採機を利用する。

  • キーワード:ナガチャコガネ、発生分布、被害検出、局所防除
  • 担当:野菜茶研・茶生産省力技術研究チーム、茶IPM研究チーム
  • 代表連絡先:電話0547-45-4101
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ナガチャコガネ幼虫によるチャの地下部の食害は、一番茶芽の生育を阻害し、多発生条件下においては一番茶収量を激減させる。本種の防除法として、主に秋冬期の幼虫を対象とした有機リン剤の土壌灌注が実施されるが、多量の薬剤と多大な労力を要する。一方、本種による一番茶被害の分布は集中的であるため、分布に応じた局所的防除により茶園への農薬投入量を大幅に低減させることが可能と考えられる。そこで、ナガチャコガネの茶園内における分布状態を解明して局所防除の有効性を検討する。また、要防除個所の特定を省力的に行うため、新芽の生育状態をセンシングし、生育不良個所の検出と位置の記録を自動的に行う計測システムを開発して防除資材の効率的利用を図る。

成果の内容・特徴

  • ピットフォールトラップを用いた標識再捕獲法調査によると雌成虫の移動の多くは畝間に沿って行われ、標識虫の1日当たりの平均移動距離は極めて小さい(データ省略)。茶園内における成虫発生分布のパターンは3年間の調査期間中、ほぼ同じ傾向であり(図1)、またその分布は一番茶芽の被害個所とほぼ一致する(図13)。以上により、一番茶の被害個所を防除対象とする局所防除は有効と考えられる。
  • 新芽生育不良個所を検出するセンサは、透過型マイクロ波水分計の送受信機を葉層部を両側から挟むように乗用型摘採機前端部フレームに設置し、マイクロ波減衰量から新芽の有無や繁茂状態を把握する(図2)。
  • GPSで位置を取得しながら0.05m間隔で多点計測し、得られた全計測値を判別分析することで求めた閾値から被害個所を判別し、省力的にマップ化できる(図3)。計測時の作業速度は最大0.8m/sと作業能率は高く、図1の茶園(約380m2)を15分で計測する。
  • マップ化された被害個所へ成虫期防除剤のテフルトリン粒剤を局所施用することにより、全面処理より大幅に少ない薬剤処理量で翌年の一番茶被害を抑制できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 茶園で発生するナガチャコガネの雌成虫の多くが飛翔筋に欠けるため移動が小さいと考えられ、本方法が有効である。
  • 本試験においては防除資材として成虫期防除薬剤のテフルトリン粒剤を用いたが、秋冬期の幼虫期防除薬剤であるMEP乳剤も利用できる。投与薬量の削減量は被害面積の割合によって変わってくる。

具体的データ

図1 ピットフォールトラップ調査によるナガチャコガネ成虫の圃場内密度分布(2004年~2006年)畝長36m、6畝(S1~S6)の茶園の片側雨落ち部に1m間隔でトラップを設置。但し、S1、S2の2畝は畝長25m。成虫発生期間中に各トラップで捕獲された雌雄合計値を示す。

図2 センシング装置

図3 センシング結果

その他

  • 研究課題名:局所管理技術を利用したナガチャコガネの効率的防除法の開発
  • 中課題整理番号:214l
  • 予算区分:基盤、委託プロ(生物機能)
  • 研究期間:2004~2009年度
  • 研究担当者:大泰司誠、深山大介、佐藤安志、石島力、荒木琢也、角川修