水溶液中でのモノグルコシルルチン/カテキン複合体形成による淡色効果

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要約

緑茶由来のカテキン類は水溶液中で黄色のフラボノール配糖体であるモノグルコシルルチンと複合体を形成し、淡色効果を起こす。この効果はガレート型カテキンの方が非ガレート型カテキンより大きい。

  • キーワード:茶、モノグルコシルルチン、カテキン類、複合体形成、淡色効果、水色
  • 担当:野菜茶研・野菜・茶の食味食感・安全性研究チーム
  • 代表連絡先:電話0547-45-4101
  • 区分:野菜茶業・茶業、食品
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

緑茶水色の主体をなすフラボノール配糖体は芳香族化合物であり、カテキン類など他の芳香族化合物と容易に複合体を形成し、その結果フラボノール配糖体水溶液の色が変化すると予想される。そこで、緑茶浸出液における水色の発現機構の一端を解明するために、フラボノール配糖体とカテキン類との複合体形成の有無、またそれによるフラボノール配糖体水溶液の色の変化を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ルチンに1分子のグルコースが結合したモノグルコシルルチン(図1)水溶液に、茶浸出液中での存在比を反映するようモル比で4当量のカテキン類を添加すると、淡色効果が起こるが、その淡色効果はガレート型カテキンの方が非ガレート型よりも大きい。2,3-cis-ガレート型カテキン[エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキンガレート(ECG)]と2,3-trans-ガレート型カテキン[ガロカテキンガレート(GCG)、カテキンガレート(CG)]との間には顕著な差は見られない(図2)。
  • この淡色効果はモノグルコシルルチン/カテキン複合体の形成によるものであり、これらの複合体の化学量論比は1:1である(分光光度計を用いたJob plotによる解析より)。表1に示した結合定数の大きさより、ガレート型カテキンの方が非ガレート型よりもモノグルコシルルチンとの複合体を形成しやすいと言え、この違いが淡色効果の大きさに反映されると考えられる。また2,3-trans-ガレート型カテキンの方が2,3-cis-ガレート型カテキンよりも結合定数が大きい(表1)。
  • カテキン分子のどの部分が複合体形成に関与しているのかを明らかにするために、カテキン分子のA環、水酸基が2つまたは3つのB環、およびガロイル基を模した4種類のポリフェノール(それぞれ5-メトキシレゾルシノール、カテコール、ピロガロールおよびメチルガレート)について、それぞれモノグルコシルルチンとの複合体形成の有無を確認すると、ガロイル基に相当するメチルガレートのみが淡色効果を起こし大きな結合定数を示す(表1)。5-メトキシレゾルシノールおよびピロガロールはわずかにモノグルコシルルチン水溶液の吸光度を変化させるが、変化が小さすぎるため結合定数は算出不可能である。カテコールでは吸光度は変化しない。したがって、モノグルコシルルチンとの複合体形成においてはカテキン分子内のガロイル基が主要な役割を担うと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、ケルセチンの配糖体であり、茶に含有される主要なフラボノール配糖体の一つであるルチンの誘導体のモノグルコシルルチンをモデル化合物として使用しての実験結果である。ルチンとの構造の類似性から、緑茶に含有されるフラボノール配糖体についても同様の現象が起こりうると考えられる。

具体的データ

図1 モノグルコシルルチンおよびルチンの構造

図2 カテキン類添加によるモノグルコシルルチン水溶液の吸光度の変化

表1 水溶液中( 26 °C )でのモノグルコシルルチン/カテキン複合体の結合定数

その他

  • 研究課題名:野菜・茶の食味食感評価法の高度化と高品質流通技術の開発
  • 課題ID:311g
  • 予算区分:所内プロ(緑茶水色発現機構)
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:氏原ともみ、林宣之
  • 発表論文等:Ujihara T. and Hayashi N.(2009)Biosci. Biotechnol. Biochem. 73(12):2773-2776