さび病抵抗性を有する中間母本「ねぎ中間母本農1号」

要約

「ねぎ中間母本農1号」は、既存の品種に比べてさび病による病斑の発生が少なく、強い抵抗性を示す。抵抗性は部分優性に遺伝し、さび病抵抗性品種を育成するための育種素材として利用できる。

  • キーワード:ネギ、さび病、抵抗性育種、循環選抜
  • 担当:野菜茶研・野菜育種研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

さび病は、ネギの商品価値を下落させる重要な地上部病害であり、秋から梅雨期の長期にわたり発生するため、栽培期間中農薬による防除が高頻度に行われている。ネギ種内には、本病に十分な抵抗性を持つ育種素材が認められていない。そこで、循環選抜によって抵抗性に関わる遺伝子頻度を高めた集団を育成し、その抵抗性を固定することにより、既存品種よりも抵抗性の強いネギの中間母本を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ねぎ中間母本農1号」は、ネギ遺伝資源133品種・系統の中から選定した、発病程度の比較的低い「聖冬一本」、「岩井2号」、「長寿」、「せなみ」、「冬扇一本」および「豊川太」の6品種を基本集団として、循環選抜を2サイクル行った後、自殖系統選抜を3回繰り返して抵抗性および主要形質を固定させた中間母本候補である(図1)。
  • 「ねぎ中間母本農1号」は、循環選抜の基本集団の一つとした「長寿」や比較的強い抵抗性を持つ市販品種「夏扇3号」が激しく発病する条件下でも、さび病の病斑数が少なく、病徴の拡大も遅いことから、既存のネギ品種に比べて明らかに強い抵抗性を示す(表1)。
  • 「ねぎ中間母本農1号」の抵抗性は、植物の生育段階が異なっても、安定して発現する(表1)。
  • 「ねぎ中間母本農1号」と罹病性系統の短葉26-4s-2s-2sとの交雑F1は、「ねぎ中間母本農1号」より抵抗性が弱く、F2の自殖により得たF3系統群では幅広い抵抗性の変異が認められることから、さび病抵抗性は複数の遺伝子に支配されており、部分優性に遺伝すると推定される(図2)。
  • 「ねぎ中間母本農1号」は、「吉蔵」や「夏扇3号」と同じく千住群の形態的特性を示し、立性で襟じまりが良く、分げつはほとんど発生しない(表2)。生育がやや遅く、収量性は市販品種より低い。

成果の活用面・留意点

  • 本系統は、ネギのさび病抵抗性向上のための育種素材として用いることができる。
  • 本系統の抵抗性は部分優性に遺伝すると考えられるため、本系統を素材としてさび病抵抗性F1品種を育成する場合には、両親に抵抗性を持たせることが望ましい。

具体的データ

図1 「ねぎ中間母本農1号」の育成系統図

表1 播種期の異なる「ねぎ中間母本農1号」のさび病抵抗性

図2.「ねぎ中間母本農1号」と短葉26-4s-2s-2sとの交雑F3系統群におけるさび病の発病評点の分布

表2 「ねぎ中間母本農1号」の春まき秋どり栽培における収穫物特性

その他

  • 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
  • 中課題整理番号:211j.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:1998~2010年度
  • 研究担当者:若生忠幸、山下謙一郎、塚崎光、小原隆由、小島昭夫、野口裕司
  • 発表論文等:1)Yamashita K. et al. (2005) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 74(6): 444-450
    2)若生ら「ねぎ中間母本農1号」品種登録出願2011年3月31日(第25781号)