根こぶ病に強い抵抗性を示すハクサイF1品種「あきめき」

要約

「あきめき」はマーカー選抜と戻し交雑により3つの根こぶ病抵抗性遺伝子を集積したF1品種で、4つのグループの根こぶ病菌すべてに抵抗性を有する。播種後約75日で収穫可能な中早生品種であり、外観はコンパクトで内部は鮮やかな黄色である。

  • キーワード:ハクサイ、根こぶ病抵抗性、DNAマーカー、マーカー選抜、黄化病抵抗性
  • 担当:野菜茶研・野菜ゲノム研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

アブラナ科野菜の栽培において根こぶ病の被害は深刻であり、アブラナ科野菜の作付けを放棄する生産者も少なくない。特にハクサイの場合、根こぶ病菌の病原性の分化に伴い抵抗性品種が罹病化することが問題となっており、抵抗性遺伝子を集積し多様な根こぶ病菌に抵抗性を示す品種の早期育成が望まれている。そこで、マーカー選抜により短期間でこれまでにない強い根こぶ病抵抗性品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「あきめき」は、F1品種「秋理想」(株式会社日本農林社)の両親を反復親、2つの抵抗性遺伝子Crr1Crr2を有するR861(「はくさい中間母本農9号」)を1回親として、F1に4回連続戻し交雑を行い、抵抗性遺伝子を固定した両親の間のF1である(図1)。
  • 両親の選抜過程において抵抗性遺伝子の有無の判断に用いたのは、Crr1遺伝子とCrr2に連鎖するマーカーの遺伝子型である(図2)。Crr1Crr2は根こぶ病の菌系によって不完全優性または劣性形質を示すため、マーカーを用いることによって、従来の戻し交雑と自殖を交互に繰り返し自殖後代で抵抗性個体を選抜する方法に比べて、選抜が短期間に行える。「あきめき」の育成に要した期間はCMS化に要した1年を除くと実質4年である。
  • 「あきめき」は、「はくさい中間母本農9号」に由来するCrr1Crr2および反復親T221に由来するCRbと推定される3種類の抵抗性遺伝子を有する。「CR隆徳」と「SCRひろ黄」が示す抵抗性の違いによりグループ化された4つの根こぶ病の菌系のすべてに抵抗性である(表1)。
  • 「あきめき」は播種後約75日で収穫可能であり、出荷時の球長は約30cm、重さ2.5~3kg程度であり、根こぶ病抵抗性以外の諸特性は「秋理想」に類似する(図3)。また「あきめき」は黄化病にも罹病しにくく、ハクサイ栽培で問題となる2つの難防除土壌病害に抵抗性の品種である(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • 根こぶ病菌は多様であるため、「あきめき」が発病する菌系が存在する可能性もある。菌密度が特に高い圃場では、抵抗性品種の利用を含めて複数の防除手段を用いる総合防除の観点に立った対策が必要である。
  • 「あきめき」は秋冬どりのハクサイ栽培の作型に向いている。
  • 本品種の種子は、2012年6月以降、(株)日本農林社から販売予定である。

具体的データ

図1 「あきめき」の育成経過

根こぶ病抵抗性遺伝子選 抜マーカーのアガロース ゲル電気泳動パターン 図3 「あきめき」の結球形態

表1 4グループの根こぶ病菌に対する「あきめき」の抵抗性

その他

  • 研究課題名:野菜におけるDNAマーカー整備及び遺伝子機能解明と利用技術の開発
  • 中課題整理番号:221i
  • 予算区分:基盤、委託プロ(新農業)
  • 研究期間:2007~2010年度
  • 研究担当者:松元哲、高下新二((株)日本農林社)、畠山勝徳、宮崎俊夫((株)日本農林社)、
    近藤友宏((株)日本農林社)、柿崎智博、小原隆由、石田正彦
  • 発表論文等:松元ら「あきめき」品種登録出願 2011年6月6日(第25985号)