うどんこ病・つる割病・ワタアブラムシ抵抗性のメロンF1品種「アルシス」

要約

「アルシス」は、うどんこ病、つる割病およびワタアブラムシに対して抵抗性を有するアールス系メロンF1品種である。果実の品質および日持ち性ともに優れる。

  • キーワード:メロン、うどんこ病抵抗性、つる割れ病抵抗性、日持ち性、ワタアブラムシ抵抗性
  • 担当:野菜茶研・野菜育種研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

アールス系メロン産地では、栽培上の大きな問題である主要病害虫に対する抵抗性に加えて、高い果実品質や日持ち性を兼ね備えた品種が強く要望されている。そこで、うどんこ病、つる割病およびワタアブラムシに対する高い抵抗性に加え、優れた果実品質と日持ち性を有するアールス系メロン品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「アルシス」は、高品質・高日持ち性の(株)萩原農場育成固定系統HGMP-2を種子親とし、うどんこ病・つる割病・ワタアブラムシ抵抗性・高日持ち性の野菜茶業研究所育成固定系統AnMP-5を花粉親とするアールス系メロンF1品種である(図1)。うどんこ病(レースpxA)、つる割病(レース2)およびワタアブラムシ抵抗性を有する(表1)。なお、花粉親のAnMP-5は、「アールス輝」(野菜茶業研究所・愛知県共同育成)の自殖後代から病虫害抵抗性と果実品質で選抜・固定した系統である。
  • 果実の外観は、「雅春秋系」((株)横浜植木)とほぼ同等で良好である。果皮はわずかに緑がかった灰色で、果実重は1,800g程度、果実は球形である。ネットの密度・盛り上がりともに良好である。「アールス輝」に比べ、外観に優れる(図2、表2)。
  • 果実の内部品質は「雅春秋系」と同程度に優れ、食味は良好である。果肉は淡黄緑色で、果実の中心および内壁(種子のある胎座と果肉の境目部分)の糖度は「雅春秋系」に比べて同等からやや高い。また、果実の日持ち性は「アールス輝」より長く、「雅春秋系」と同等からやや優れる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 半促成から早熟作型では果実の肥大およびネットの発現が不安定になりやすいため、これらの作型には不適で、抑制作型で最も品種特性を発揮する。
  • うどんこ病のレースによっては罹病する場合がある。
  • メロンえそ斑点病やつる割病のレース1や1,2yに対しては抵抗性を有しないため、発生が懸念される圃場では抵抗性台木の利用や土壌消毒等の対策が必要である。
  • 「アルシス」は野菜茶業研究所と(株)萩原農場とで共同育成した品種であり、種子は(株)萩原農場より販売される予定である。

具体的データ

図1 「アルシス」の育成系統図図2.「アルシス」の果実

表1 「アルシス」の病虫害抵抗性

表2 「アルシス」の抑制栽培における果実特性

その他

  • 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
  • 中課題整理番号:211j.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2005~2010年度
  • 研究担当者:坂田好輝、杉山充啓、小原隆由、吹野伸子、小島昭夫、吉岡洋輔、下村晃一郎、野口裕司、
    橋本友秀((株)萩原農場)、野村 毅((株)萩原農場)、原田 守((株)萩原農場)
  • 発表論文等:坂田ら「アルシス」品種登録出願 2011年6月15日(第26036号)