トマトロックウール養液栽培用の施肥・給液量管理コントローラ
要約
トマトロックウール養液栽培で循環式量管理を行うと、かけ流し式濃度管理に比べて、施肥量が約7割削減され、総収量は増加する。開発した量管理コントローラでは、トマトの吸水量に基づき施肥量が計算でき、設定に応じて自動的に施肥・給液できる。
- キーワード:吸水量、濃度管理、養液栽培、ロックウール、量管理
- 担当:野菜茶研・高収益施設野菜研究チーム
- 代表連絡先:電話0569-72-1647
- 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
ロックウールを使用したトマト養液栽培では、一定濃度に調製された培養液を2~3割の排液を出すように給液するかけ流し式濃度管理による栽培が一般的であるが、排液による肥料の無駄が多く、生育制御も難しい。水耕栽培では、生育中の株に必要な量の養分を1日単位で与える量管理を行うことで、容易かつ精密に草勢を制御できる(中野ら、平成18年度研究成果情報)。そこで、水耕栽培において開発した量管理法を、培地耕であるロックウール栽培に適用できるか検証した上で、自動的に培養液管理を行うコントローラを開発する。
成果の内容・特徴
- ロックウール養液栽培で循環式量管理を行うと、かけ流し式濃度管理に比べて、施肥量が約7割削減される。トマトの1果重が大きくなり、総収量も増加する(表1)。
- 開発した量管理コントローラは、親機と子機で構成される(図1)。子機を増やすことで、施肥量が異なる系統(培地や循環タンクを含む給液経路)を増やすことに対応できる。
- 子機は、系統毎の循環タンクへの原水の補給量と、培地への給液量を測定する流量計の数値の収集を行い親機へ送る。また、親機での設定に基づき、給液ポンプを作動させる(図2)。
- 親機では、常に加える施肥量(図3bの値)、吸水量に比例して加える施肥量(図3aの値)、施肥量の限界量(図3cの値)を入力することで施肥量が自動的に計算される(図3)。原液の循環タンクへの供給時刻、循環タンクから培養液が培地へ供給される給液量・給液時刻・給液時間を系統毎に設定できる。肥料原液は、親機の信号により作動する定量ポンプで、各循環タンクへ送られる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本機器は特注品として大塚アグリテクノ株式会社が作製したものである。
- 品種や環境条件の違いにより、肥料の適正量が異なる場合があるため、培地内培養液のECおよび硝酸態窒素濃度をチェックし、管理する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:トマトを中心とした高収益施設生産のための多収、低コスト及び省力化技術の開発
- 中課題整理番号:213a
- 予算区分:委託プロ(加工)
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:鈴木克己、中野有加、松田 怜、佐々木英和、高市益行
- 発表論文等:1)Nakano Y. et. al. (2010) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 79:47-55
2) Matsuda R. et. al. (2010) J. Agric. Meteorol. 66:217-226