定植前の透明ポリマルチによる牛ふん堆肥連用圃場の土壌窒素無機化促進

要約

牛ふん堆肥連用圃場で、堆肥を慣行よりも1ヶ月早く施用し、堆肥施用後から定植までの間、透明ポリマルチで被覆することにより地温が上昇し、土壌窒素の無機化が促進され、年内どり作型キャベツでは堆肥のみの施用で化成肥料施用と同等の収量を得ることが出来る。

  • キーワード:キャベツ、土壌窒素無機化、堆肥早期施用、透明ポリマルチ
  • 担当:野菜茶研・業務用野菜研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8528
  • 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

家畜排せつ物の有効利用や有機栽培による有利販売などの観点から、堆肥のみの施用で野菜類を高位安定生産する技術が求められている。しかし、慣行法による堆肥のみの施用では、化成肥料なみの収量を得ることが困難である。そこで、物理的手法により堆肥の利用効率の向上を図るために、透明ポリマルチによる土壌窒素無機化促進方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 牛ふん堆肥混合土壌の窒素の無機化は30°Cでは促進されるが、25°C以下では77日後でも無機態窒素の放出は認められない(図1)。
  • 深さ10cmにおける日平均地温は、年内どり作型キャベツの堆肥施用~定植までの期間に相当する7~8月において、無機化が促進される35~40°Cにまで透明ポリマルチ被覆によって高まり、裸地に比べて5~10°C上昇する。一方、初夏どり作型の堆肥施用~定植に相当する3~4月の地温は、マルチ被覆によって5°C程度上昇するが、25°Cを超えることはない(図2)。
  • 地温と堆肥の無機化期間を確保するため、堆肥を定植約2ヶ月前に早期施用し、畝面を透明ポリマルチで被覆した堆肥マルチ区については、初夏どり作型では、定植時の土壌中の無機態窒素濃度はほとんど増加しないが、年内どり作型では、化成肥料施用直後と同程度にまで増加する(図2)。一方、いずれの作型においても、堆肥を定植約1ヶ月前に施用する堆肥慣行施用区では、定植時の土壌中の無機態窒素濃度は、ほとんど増加しない。
  • 年内どり作型では堆肥マルチ区の収量は化成肥料区と同等である。初夏どり作型では、堆肥慣行施用区より高くなるが、化成肥料区よりも低い(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本試験における化成肥料区は化成肥料(N:P:K=8:8:8)を25 kgN/10a/作、堆肥慣行施用区と堆肥マルチ区は堆肥のみを全窒素で75 kgN/10a/作、それぞれ年2作で9年連用したうちの7年目にあたる12、13作目の結果であるが、9~16作目でも同様の結果となる。また、堆肥マルチ区の透明ポリマルチは定植後に除去している。なお、供試した堆肥は乳牛ふんとおがくずを原料とし、水分含量70.7%、全窒素3.39%、CN比13(平均)である。
  • 本試験は茨城県つくば市におけるものであり、適用地域の気象条件の違いを考慮する必要がある。例えば、気温・地温が十分確保できる地域であれば、初夏どり作型キャベツの堆肥マルチ区で十分な収量が得られる可能性がある。

具体的データ

牛ふん堆肥混合土壌の温度別窒素無機化曲線堆肥およびその施用方法がキャベツ収量 におよぼす影響

深さ10cm の日平均地温と土壌中の無機態窒素濃度の変化

その他

  • 研究課題名:キャベツ、ねぎ、レタス等の業務用需要に対応する低コスト・安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:211h
  • 予算区分: 基盤
  • 研究期間: 2006~2010年度
  • 研究担当者: 徳田進一、村上健二