透水性改善による熱水土壌消毒と耐病性台木を組み合わせたトマト青枯病の防除
要約
透水性が悪い黒ボク土からなる圃場では、籾殻の大量投入と深耕による透水性改善で熱水土壌消毒の効果が高められ、抵抗性台木との組み合わせにより、トマト青枯病の被害を低減できる。
- キーワード:透水性改善、籾殻施用、深耕、熱水土壌消毒、トマト青枯病
- 担当:野菜茶研・野菜IPM研究チーム
- 代表連絡先:電話050-3533-3863
- 区分:野菜茶業・野菜生産環境
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
熱水土壌消毒は化学農薬を使わず、環境負荷の小さい土壌消毒技術として我が国に普及してきている。一方、トマト青枯病は温暖地における土壌伝染性の難防除病害であり、透水性不良圃場では熱水土壌消毒のみでは防除効果がない。そこで、トマト青枯病激発圃場における透水性改善処理による熱水土壌消毒効果の補強と、本病耐病性台木への接ぎ木を組み合わせた防除技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 透水性が悪い黒ボク土からなる青枯病激発露地圃場において、小型パワーショベルにより約70cmまで深耕すると同時に籾殻10~14kg/m2を鋤込んで透水性改善して250L/m2の熱水処理を行うと、土壌深度50cmにおいて地温が60°C以上に達し、青枯病菌の死滅温度となる(図1)。
- 上述の圃場に「がんばる根3号」を台木、「桃太郎T93」を穂木とした接ぎ木苗を5月に定植すると、無処理、熱水のみ処理、透水性改善して熱水処理したいずれの区でも「桃太郎T93」の自根苗と比較して発病が遅延する(図2)。
- 接ぎ木苗を使用した場合にも、無処理と熱水のみ処理した区では最終的にほぼ100%の株が発病して第3花房以上での収穫が困難となるが、透水性改善して熱水処理した区における発病株率は40%以下となり、少なくとも第4花房までは収穫可能である(図2)。
- 熱水処理後から、定植した苗の発病による影響が出始めるまで、土壌中の青枯病菌密度が、透水性改善・熱水処理区では検出限界(102 cfu/g乾土)以下に抑えられる(図3)。無処理と熱水処理のみの区では、本菌密度は同期間に103~104cfu/g乾土で推移する。
成果の活用面・留意点
- 透水性が優れた圃場においては熱水処理のみによりトマト青枯病の防除が可能であり、本技術は透水性が悪い圃場に適用する。
- 水や湯の約200L/m2を圃場に注入して、表流水が現れる場合に透水性が悪いとする。
- 透水性改善区においては窒素欠乏と思われる症状が発生する場合があり、液肥等による応急的な対応が求められる場合がある。
- 熱水処理時の土壌の物理性・化学性の解析は不十分である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:野菜栽培における土壌微生物、天敵の機能解明と難防除病害虫抑制技術の開発
- 中課題整理番号:214k
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2003~2008年度
- 研究担当者:窪田昌春、西 和文、佐藤 衛、篠原 信
- 発表論文等:窪田ら(2010)関西病虫害研究会報、52:1-9