「べにふうき」緑茶中カテキン類の吸収性に及ぼす粉末茶平均粒子径の影響

要約

「べにふうき」緑茶を平均粒子径2.9μmに粉砕して経口投与すると、19μmや76μmに粉砕した粉末茶に比べ、エステル型カテキン類の血液中薬物濃度時間曲線下面積(AUC)が2~3倍に上昇する。

  • キーワード:「べにふうき」緑茶、粉末、体内吸収性、エステル型カテキン類
  • 担当:野菜茶研・野菜・茶機能性研究チーム
  • 区分:野菜茶業・茶業、食品
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

アレルギーは世界中で増加しており、今後、さらに食品成分による予防が必要になる疾病の一つである。「べにふうき」は、マスト細胞や好塩基球の活性化を強く抑制して抗アレルギー効果を発揮するメチル化カテキンを多く含む茶であり、エステル型カテキン類(エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキンガレート(ECG)、メチル化カテキン(EGCG3"Me))の体内吸収性の低いことが、十分な効果の上がらない一つの原因になっていることから、効率よく摂取する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 各群5匹のラットに異なる平均粒子径(2.9、19、76μm)の粉末茶125mgを2mlの蒸留水に分散させて強制経口投与し、同様に粉末茶(76μm径)125mgを2mlの熱水で10分間煮沸抽出した遠心分離上清(抽出液)を強制経口投与して、経時的に血中カテキン類含量を測定すると、2.9μm 群及び抽出液と76μm 群及び19μm 群との間に比べて2~3倍のエステル型カテキン(EGCG、ECG 、EGCG3"Me)の血液中薬物濃度時間曲線下面積(AUC)を示す。遊離型カテキン類(EGC、EC)では、各群に差異は認められない(表1)。
  • EGCG3"Meのピーク時吸収率では、2.9μm群、抽出液>76μm群、19μm群の順(図1A)となり、EGCGのピーク時吸収率では、2.9μm群>抽出液、76μm群、19μm群の順(図1B)である。EGCG3"Me吸収率-時間曲線下面積の平均値では、2.9μm群、抽出液と76μm群、19μm群の間で約3倍の違いが認められる。

成果の活用面・留意点

  • これは、動物試験により得られた成果であり、ヒト試験を行ってさらに検討する必要がある。
  • 抹茶の平均粒径は約20μm、家庭用コーヒーミルで粉砕した場合の緑茶粉末の平均粒径は約80μmである。
  • エステル型カテキン類は、茶葉中では約2μm径の小液胞に存在するとされ、2.9μmに粉砕することで、容易に溶出し吸収率が上がると考えられる。

具体的データ

粒子径が摂取量、血液中薬物濃度時間曲線下面積(AUC)に及ぼす影響

EGCG3

その他

  • 研究課題名:野菜・茶の免疫調節作用、生活習慣病予防作用を持つ機能性成分の評価法と利用技術の開発
  • 中課題整理番号:312b
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2009~2010年度
  • 研究担当者:山本(前田)万里、物部真奈美、栗山進一(東北大)、立花宏文(九州大)、
    鮫島庸一(掛川市立総合病院)
  • 発表論文等:Maeda-Yamamoto M. et al. (2011) Cytotechnology , 63(2):171-179