ホウレンソウべと病菌レース8および新たな病原性系統の発生
要約
2010年にホウレンソウべと病菌レース1から7までに対して抵抗性を持つ品種に発生したべと病菌は、日本では未報告のレース8および新たな病原性系統である。
- キーワード:ホウレンソウべと病菌、Peronospora farinosa f. sp. spinaciae、レース
- 担当:野菜茶研・野菜IPM研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8528
- 区分:野菜茶業・生産環境
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
ホウレンソウべと病はPeronospora farinosa f. sp. spinaciaeによる種子伝染および空気伝染性の病害であり、世界的にはレース1から11までの発生が報告されている。近年、日本国内ではレース5と、6もしくは7の発生が確認されているため、本病の発生しやすい時期にはレース1から7までの抵抗性を持つ品種が導入されている。しかし、2010年に各地のホウレンソウ産地で抵抗性品種において本病が発生した。そこで、日本国内では未報告の新しいレースが発生した可能性が考えられるため、病原菌のレースを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 2010年1月~5月に日本国内各地で採取されたホウレンソウべと病菌は、レース判別品種(Correll et al. 2010、International Seed Federation 2010)に対する病原性の反応(子葉上における分生子形成の有無)からレース8と判定されるものと、既知のレース1~11とは異なる新たな病原性系統に分けられる(表1)。
- レース8と判定される菌株はホウレンソウ「おかめ」の子葉上で分生子形成が認められたのに対し、新たな病原性系統と判定される菌株は分生子形成が認められない(表1)。
成果の活用面・留意点
- レース判別品種に関する情報は、国際種子連盟(International Seed Federation: ISF)のホームページ(http://www.worldseed.org/isf/home.html)から入手できる。
- 本病に対して感受性と考えられてきたホウレンソウ「おかめ」の子葉上において、分生子を形成しない病原性系統の存在が明らかとなり、病原菌の維持や増殖を行う際には当該病原菌を分離した品種等の使用が望ましい。
- 日本国内で未報告のレースが海外では発生していることから、今後も新たなレースが発生する可能性がある。
具体的データ

その他
- 研究課題名:野菜栽培における土壌微生物、天敵の機能解明と難防除病害虫抑制技術の開発
- 中課題整理番号:214k
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2010年度
- 研究担当者:山内智史、白川 隆、佐藤 衛、堀之内勇人(岐阜農技セ)、
酒井和彦(埼玉農総セ)、米本謙悟(徳島農総セ)