SAFE装置を用いた高真空蒸留による茶香気成分の分析方法
要約
ジクロロメタンを用いて温度45°Cの還流により香気成分を抽出し、ガラスウール2g を詰めたSAFE 装置を用いて温度30°Cで高真空蒸留(10-3pa)すると、妨害成分の影響なく茶香気成分をGC分析できる。
- キーワード:茶、香気成分、SAFE、高真空蒸留、GC分析
- 担当:野菜茶研・茶生産省力技術研究チーム
- 代表連絡先:電話0547-45-4101
- 区分:野菜茶業・茶業、食品
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
Solvent-assisted flavor evaporation (SAFE)装置を用いた高真空蒸留は、沸点が高い香気成分を収率よく蒸留する方法として知られている。同法では、有機溶媒で香気成分を対象試料から抽出し、その香気抽出物をSAFE装置で蒸留する方法が多く採用されている。ただし、茶葉から得られる香気抽出物をSAFE装置で蒸留すると、蒸留物にはガスクロマトグラフィー(GC)分析で妨害となる成分が含まれてくる。そこで、茶葉からジクロロメタンを用いた還流により香気成分を抽出し、分留効果を高めるためガラスウールを詰めたSAFE装置で高真空蒸留(10-3 pa)する分析方法を確立する。
成果の内容・特徴
- ジクロロメタンを用いて温度45°Cの還流で得られる紅茶の香気抽出物をSAFE装置で蒸留する。この蒸留物を繰り返しGC分析すると、緑茶と紅茶の香気成分であるヘキセナール、リナロール、ゲラニオール、ジャスミンラクトンの内標準比の相対標準偏差(RSD)は50%以上であり(図1a)、蒸留物はGC分析上妨害となる成分を含んでいる。
- SAFE装置にガラスウール2gを詰めて紅茶香気抽出物を高真空蒸留する。この蒸留物を繰り返しGC分析すると、ヘキセナール、リナロール、ゲラニオール、ジャスミンラクトンの内標準比のRSDは3%以内となり、GC分析上の妨害となる成分は蒸留物に含まれていない(図1b)。
- 沸点250°C以上の香気成分において、SAFE装置を用いた高真空蒸留ではアミノアセトフェノンを除き、分留温度25°Cから35°Cにおいて96%以上の回収率である(表1)。この温度範囲の中間をとって分留温度は30°Cとする。
- 煎茶と紅茶を従来の減圧蒸留(0.4kpa)とガラスウール2gを詰めたSAFE装置で高真空蒸留(10-3pa)して得られた蒸留物をGC分析で比較すると、ヘキサジエナール、ノナジエナール、デカジエナール、マルトール、ソトロンについては減圧蒸留より高真空蒸留の方が約20倍以上高い内標準比である(表2)。
成果の活用面・留意点
- SAFE装置にガラスウールを詰める際、真空ポンプを併用するとよい。ただし、一度挿入したガラスウールは除去できない。詰めるガラスウールは2g程度がよいが、それより少量だと蒸留中に移動し、分留効果が得られなくなる。
- SAFE装置を洗浄する際、装置を逆さにしてメタノール、アセトン、ジクロロメタンを順次装置内に注入する。汚れが落ちない場合、超音波水槽内に入れ洗浄する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:生体情報及び高度センシング技術による茶の省力栽培・加工技術の開発
- 中課題整理番号:223b
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2008~2010年度
- 研究担当者:水上裕造、山口優一
- 発表論文等:水上、山口(2010)茶業研究報告、110:105-112