リーフレタスFT様遺伝子の葉での発現量は、茎頂の花芽発達に伴って増加する
要約
レタスより単離したLsFT遺伝子は、他の植物のFT様遺伝子と同様に、過剰発現させることによりシロイヌナズナの抽苔を促進する。本遺伝子の発現量は1日のなかで変動するとともに、花芽の分化・発達に伴い増加する。
- キーワード:高温、リーフレタス、FLOWERING LOCUS T (FT)遺伝子、花成
- 担当:業務需要畑野菜作・野菜周年安定生産
- 代表連絡先:電話 029-838-8528
- 研究所名:野菜茶業研究所・野菜生産技術研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
レタスの抽苔誘導には高温が大きく関与するため、近年の異常気象や温暖化の進行がもたらす気温上昇により、レタス栽培における抽苔の多発が強く懸念される。レタスにおける抽苔制御に関連する遺伝子を特定し、その機能を明らかにすることにより、抽苔発生を抑制する先進的な栽培技術や晩抽性品種の開発に必要な基盤的知見を得ることができる。そこで、多くの植物で単離されている花成制御遺伝子FLOWERING LOCUS T(FT)のレタスにおける相同遺伝子LsFTを単離し、花芽誘導条件下におけるLsFT遺伝子の発現様式を明らかにする。
成果の内容・特徴
- レタスより単離したLsFT遺伝子cDNAの翻訳領域は175アミノ酸からなるタンパク質をコードし、シロイヌナズナ、トマト、カボチャ、リンゴにおけるFT様遺伝子とアミノ酸レベルで74~86%の相同性を示す(図1)。
- LsFT遺伝子を過剰発現させた遺伝子組換えシロイヌナズナでは抽苔が促進される(図2)。
- 低温条件(25/15°C)および花芽分化が促進される高温条件(35/25°C)において、LsFT遺伝子の葉での発現量は茎頂の花芽発達段階とよく一致する(図3A、B)。またLsFT高発現時には、1日のなかで時刻により発現量が変動する(図3B)。
成果の活用面・留意点
- 単離したLsFT遺伝子は、レタスの抽苔機構解明に向けた分子生物学的解析のターゲット遺伝子として活用できる。
- 用いたレタス品種は「リーフレタスグリーン」であり、栽培は制御環境下(35/25°Cおよび25/15°C、14時間日長)で行った。
具体的データ
(福田真知子)
その他
- 中課題名:葉根菜類の加工・業務需要に対応できる周年安定生産システムの開発
- 中課題番号:113a4
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2008~2010年度
- 研究担当者:福田真知子、松尾哲、菊地郁、本多一郎
- 発表論文等:Fukuda M. et al. (2011) J. Plant Physiol. 168:1602-1607