ナス系統「AE-P03」の主要な単為結果性遺伝子座と育種選抜マーカー
要約
単為結果性ナス系統「AE-P03」にみられる非受粉条件での果実肥大性は、第8染色体上の遺伝子座Cop8.1によって支配される。本形質は、近傍のDNAマーカーemf21H22およびemh11J10により選抜できる。
- キーワード:単為結果性、選抜マーカー、遺伝子、省力化、ナス
- 担当:日本型施設園芸・野菜ゲノム利用技術
- 代表連絡先:電話 050-3533-3863
- 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
ナスの生産現場において果実の着果・肥大安定性の向上は重要な課題であり、単為結果性はこれを抜本的に解決する有用形質として品種開発に利用されている。しかし、育種過程における単為結果性の検定には、結実期までの長期間の栽培と除雄および袋かけなどの煩雑な作業を要する。そこで、単為結果性を持つ個体を幼苗期に精度良く選抜可能な育種選抜マーカーを開発する。
成果の内容・特徴
- ナス系統「AE-P03」の持つ非受粉条件での果実肥大性は、本系統の育成母本である海外ナス品種「Talina」に由来すると推定され、第8染色体上のCop8.1遺伝子座に支配される(図1)。
- Cop8.1上のAE-P03型対立遺伝子は、1組のSSRマーカー、emf21H22とemh11J10によって選抜できる(表1)。それぞれのプライマーの塩基配列は以下のとおりである。
emf21H22/U:ATCAAGATGAACAAGACTAAGGAGTGC
emf21H22/L:GTTTCTTCAACCTGTCTTTAGCCCA
emh11J10/U:AGAATTTCTGAGCATTTTCCCGAC
emh11J10/L:GTTTCCACAAGACCCTTTCTCCCTT
- 「AE-P03」と日本の在来ナス品種とのF2世代において、Cop8.1座のAE-P03型対立遺伝子をホモに有する個体は「AE-P03」と同等の高い単為結果率を示す(表2)。
- 本課題で得られた選抜マーカーは、「AE-P03」や「あのみのり」など「Talina」を母本とする単為結果性ナス品種・系統に共通する特有の遺伝子型を示し、様々な交配組み合わせ間で利用可能な高い汎用性を持つ(表1)。
普及のための参考情報
- 普及対象:ナスの品種育成に携わる試験研究機関および民間種苗会社等
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:公設試2機関、民間1機関において当該マーカーを利用した品種育成を実施中
具体的データ



(宮武宏治)
その他
- 中課題名:野菜におけるゲノム情報基盤の構築と利用技術の開発
- 中課題番号:141g0
- 予算区分:委託プロ(気候変動、DNAマーカー)、交付金
- 研究期間:2004~2011年度
- 研究担当者:宮武宏治、齊藤猛雄、根来里美、山口博隆、布目司、大山暁男、福岡浩之
- 発表論文等:Miyatake et al. (2012) Theor. Appl. Genet. DOI: 10.1007/s00122-012-1796-8.