「サンルージュ」含有アントシアニンの茶期別および葉位別変動特性と生理活性
要約
「サンルージュ」の総アントシアニン含有量は、三番茶ならびに第1葉、第2葉で多い。また、「サンルージュ」緑茶熱水抽出液および茶葉自体に含有されるアントシアニンは、ヒト神経細胞アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性を有意に抑制する。
- キーワード:「サンルージュ」、茶、アントシアニン、アセチルコリンエステラーゼ活性抑制
- 担当:食品機能性・生体防御利用技術
- 代表連絡先:電話 0547-45-4101
- 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
電子機器の発達で、職場や家庭では目の過度な使用が常態化しており、眼精疲労やストレスに対して軽減作用のある機能性食品の開発が期待されている。これまでに、ブルーベリーのアントシアニン画分には、目の焦点調節を阻害するAChE活性に抑制作用のあることや抗酸化性のあることが報告されている。一方、野菜茶業研究所が育成した「サンルージュ」は従来の茶には含有されていないアントシアニンを多く含んでいる。そこで、「サンルージュ」に含まれるアントシアニンの茶期別および葉位別変動を明らかにするとともに、AChE活性抑制作用を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 「サンルージュ」に含まれる総アントシアニン含有量は茶期および葉位により変動し、三番茶(8月上旬摘採)および第1葉、第2葉で多い。アントシアニン中にはデルフィニジン配糖体がシアニジン配糖体より多く含まれており、その含有比率はすべての茶期および葉位において70%以上と高い。特に茎では高く、含有比率は89%に達する(表1)。
- アントシアニンを含有する「サンルージュ」緑茶熱水抽出液は、ヒト神経細胞株SK-N-SHからのAChE活性を有意に抑制する(図1A)。また、「サンルージュ」に含有される4種のアントシアニンはいずれもAChE活性を有意に抑制する(図1B)。
- アントシアニンは供試茶3品種抽出液中「サンルージュ」のみに含まれ、カテキン含有量は「べにふうき」、「やぶきた」に比べて「サンルージュ」で少ない(表2)。このことから、AChE活性抑制作用はアントシアニンに起因すると推察される。
成果の活用面・留意点
- アントシアニン含有量のデータは、鹿児島県枕崎市で栽培した「サンルージュ」での結果である。
- 茶葉中カテキン、ブルーベリーのアントシアニン画分には、AChE活性抑制作用のあることがこれまでに報告されている。
- 抗酸化性(ラジカル捕捉活性)の強さは、デルフィニジン>シアニジンであることが報告されている。
- 「サンルージュ」の交配親である「茶中間母本農6号」の各茶期でのアントシアニン総量に対するデルフィニジン配糖体含有比率は、約50%である。
具体的データ
(山本(前田)万里、根角厚司)
その他
- 中課題名:生体防御作用に関する健康機能性解明と有効利用技術の開発
- 中課題番号:310c0
- 予算区分:イノベーション創出、実用技術
- 研究期間:2008~2011年度
- 研究担当者:山本(前田)万里、根角厚司、斉藤猛(アサヒビール)、物部真奈美、荻野暁子、白井展也
- 発表論文等:Saito T. et al. (2011) J. Agric. Food Chem. 59(9):4779-4782.