炭疽病・輪斑病複合抵抗性の緑茶用品種「さえあかり」(茶農林55号)
要約
「さえあかり」は炭疽病と輪斑病に抵抗性を有し、「やぶきた」より摘採期が早い、やや早生の緑茶用品種である。収量は「やぶきた」や「さえみどり」より優れる。製茶品質は「やぶきた」より優れ、高品質品種「さえみどり」と同等かそれ以上である。
- キーワード:チャ、さえあかり、品種、やや早生、炭疽病・輪斑病複合抵抗性
- 担当:
- 代表連絡先:
- 研究所名:野菜茶業研究所・野菜・茶機能性研究チーム、茶IPM研究チーム、茶施肥削減技術研究チーム
- 分類:普及成果情報(2009)
背景・ねらい
炭疽病と輪斑病はチャにおける重要病害である。現在、最も栽培面積が大きい「やぶきた」はこれらの病害に罹病性であり、高品質品種として急速に普及している「さえみどり」も輪斑病には罹病性であることから、高品質で炭疽病と輪斑病に抵抗性を有する品種の開発が望まれている。そこで、炭疽病、輪斑病に複合抵抗性を有する、高品質で多収の品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「さえあかり」は輪斑病抵抗性で樹勢が強いZ1を種子親、炭疽病中度抵抗性で製茶品質に優れる「さえみどり」を花粉親として、1989年に交配したF1実生群の中から選抜した緑茶用新品種である(図1、図2)。
- 「さえあかり」の付傷接種検定による炭疽病抵抗性は「やや強」、輪斑病抵抗性は「強」である。圃場における炭疽病の自然発生程度は、「さやまかおり」に隣接して植栽した場合でも極めて少なく、抵抗性は「強」である(表1)。もち病抵抗性は「やや弱」である。ただし、虫害に対しては慣行防除が必要である。
- 「さえあかり」の一番茶の萌芽期と摘採期は「さえみどり」と「やぶきた」の間に入るやや早生であり、樹姿はやや開張型で樹勢が強い(表2)。
- 「さえあかり」の生葉収量は全ての茶期で「やぶきた」や「さえみどり」より多く、一番茶の製茶品質は「さえみどり」と同等で、「やぶきた」より優れる。製茶品質の特長として、外観は細よれ、鮮緑であり、「さえみどり」様の品種香とうま味を有する。また、二番茶と三番茶の製茶品質は「やぶきた」や「さえみどり」より優れる(表2)。
- 「さえあかり」の耐寒性は、赤枯れ抵抗性に関しては「やぶきた」よりやや劣り、「さえみどり」よりやや強い(表2)。裂傷型凍害抵抗性に関しては「やぶきた」と同程度で「中」である。
普及のための参考情報
具体的データ




(吉田克志、根角厚司)
その他
- 中課題名:生物機能等の利用による茶の病害虫防除技術の開発及び抵抗性系統の開発
- 中課題番号:214l
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1989~2009年度
- 研究担当者:根角厚司、吉田克志、田中淳一、谷口郁也、荻野暁子、佐波哲次、松永明子
- 発表論文等:1)吉田ら(2012)野菜茶業研究所報告、11:73-88
2)吉田ら(2011)植物防疫、65(4):202-205
3)根角ら(2011)「さえあかり」品種登録出願公表 2011年7月21日(第24796号)