冬期のマシン油乳剤散布によるチャ赤焼病の発病助長とその抑制技術
要約
チャトゲコナジラミの基幹防除では、マシン油乳剤の冬期散布が行われるが、冬期に赤焼病初発茶園でマシン油乳剤を散布すると、赤焼病の発病が助長される。マシン油乳剤を散布する3日から7日前に銅水和剤を事前散布すると、赤焼病の発病は助長されない。
- キーワード:チャ、赤焼病、チャトゲコナジラミ、マシン油乳剤、銅水和剤
- 担当:果樹・茶・茶
- 代表連絡先:電話 050-3533-3861
- 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
チャトゲコナジラミの冬期防除にマシン油乳剤が用いられるが、マシン油乳剤の使用により、チャ赤焼病の増加が懸念されている。マシン油乳剤散布により赤焼病の発生が増加する原因は不明で、赤焼病の発生予察や初発確認が困難であることから、赤焼病の初発を見落とした茶園でマシン油乳剤を散布すると赤焼病が激発する危険性が高い。そこで、マシン油乳剤が赤焼病の発病助長に及ぼす影響を明らかにし、発病助長を抑制する手法について開発する。
成果の内容・特徴
- 室内接種試験で、マシン油乳剤を処理した「やぶきた」越冬葉から作製したリーフディスクに赤焼病細菌を接種すると、感染率は100%、感染細菌数は無処理葉の約10倍に増加し、赤焼病が発病しやすい状態になる(図1)。
- 赤焼病細菌を接種した「やぶきた」茶園で、チャトゲコナジラミに登録のあるマシン油乳剤2剤を初発時に散布すると、一か月後の発病葉数は無散布区の2倍以上となり、発病が大きく助長される(図2)。その後、カスガマイシン・銅水和剤を散布しても、マシン油散布区の発病増加は抑制できない。
- 赤焼病初発の「やぶきた」茶園では、マシン油乳剤を散布する7日前に銅水和剤を事前散布すると、銅水和剤のみを散布した場合と同様に赤焼病の発病を抑制できる(表3)。一方、銅水和剤とマシン油乳剤を混合して散布すると防除効果は低下し、マシン油乳剤散布1週間後に銅水和剤を散布した場合、防除効果はない(表3)。
- 赤焼病少発生(約40枚/m2)の「やぶきた」茶園で、マシン油乳剤を散布する3日前にカスガマイシン・銅水和剤を事前散布すると、マシン油乳剤のみの場合と比べ罹病葉数が少なく、一番茶収量は健全区に準じる(表4)。ただし、赤焼病罹病葉が多いため、全窒素と遊離アミノ酸の含有量は健全区より減少する(表4)。
普及のための参考情報
- 普及対象:茶生産者、普及指導員、公立研究機関
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:5年以内にチャトゲコナジラミ発生県全ての防除暦に採用予定。
- その他:(一社)九州病害虫防除推進協議会の茶樹連絡試験で、複数の公立研究機関で本試験と同様の結果が得られている。本法は成木園で利用可能で、水酸化第二銅水和剤とカスガマイシン・銅水和剤が事前散布に適しており、一番茶新芽発芽前の2月中旬から3月上旬に1回だけ実施する。ただし、表4に示すように、赤焼病罹病葉数が40枚/m2以上の場合は、事前散布を行っても罹病葉の増加は多い。本成果は「やぶきた」の試験結果であり、マシン油乳剤による発病助長の程度は品種間差があり得る。
具体的データ
その他
- 中課題名:多様なニーズに対応する安定多収な茶品種の育成と安定生産技術の開発
- 中課題整理番号:142f0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2010~2013年度
- 研究担当者:吉田克志、荻野暁子、山田憲吾、園田亮一
- 発表論文等:吉田ら(2013)九病虫研会報、59:13-21