気温差制御により防霜ファンの稼働時間を短縮し低コスト化できる
要約
防霜ファン設置高と樹冠面付近の気温差を稼働条件とした制御により、送風による空気の攪拌効果が低い時に稼働を停止することで、従来制御と同程度の防霜効果を維持しつつ、稼働時間を短縮でき、低コスト化ができる。
- キーワード:茶、凍霜害、防霜ファン、低コスト、気温差制御
- 担当:果樹・茶・茶
- 代表連絡先:電話 050-3533-3861
- 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
凍霜害は茶生産に甚大な経済被害をもたらす気象災害であり、対策が必須となっている。対応策の一つとして防霜ファンが広く普及しているが、近年の茶価低迷や電気料金の値上げのため、生産コストの低減に繋がる技術開発が求められている。強い自然風がある時の防霜ファンによる送風は、空気の攪拌効果が小さいため必要性が低いと考えられる。本技術では防霜ファンの稼働を攪拌効果の高い時に限定し、収量への影響がない稼働時間の短縮による生産コストの低減をねらいとする。
成果の内容・特徴
- 風が強い日は防霜ファン設置高と樹冠面の気温差が小さい(図1)。気温差が小さい時は送風による空気の攪拌効果が小さく、稼働を停止することが可能である。
- 樹冠面付近の気温が3°C以下の時に防霜ファンを稼働する従来制御に、防霜ファン設置高と樹冠面付近の気温差による制御を加えたのが気温差制御である。気温差の小さい時に稼働を停止することで電気料金を削減でき、生産コストを低減できる(表1)。
- 気温差制御を利用しても収量および生育への影響はみられず、従来制御と同程度の防霜効果を維持できる(表2)。
- 稼働条件を気温差設定値1.5~2.0°C以上、樹冠面の気温3.0°C以下とすることで、電気料金を削減できる。
- 本制御は、防霜ファン設置高に温度計を1つ追加し、既に利用している従来制御の防霜ファンの制御盤のサーモスタットを、気温差制御が可能なものに変更することで利用可能となる(図2)。
普及のための参考情報
- 普及対象:茶生産者
- 普及予定地域・面積・台数等:関東から九州にかけての全国茶生産地における凍霜害の発生地域。2012年より市販されており、現在の普及面積は約75ha、制御盤台数は約150台。2018年までの普及予定面積は2,000ha、制御盤台数は4,000台。
- 本成果をまとめた茶生産者、指導普及機関向けのマニュアルを作成し、200部配布および機構の該当サイトにて公開予定。
- 稼働条件を気温差設定値1.5~2.0°C以上、樹冠面の気温3.0°C以下とすることで、電気料金を削減できる。
- 本制御は、防霜ファン設置高に温度計を1つ追加し、既に利用している従来制御の防霜ファンの制御盤のサーモスタットを、気温差制御が可能なものに変更することで利用可能となる(図2)。
具体的データ
その他
- 中課題名:多様なニーズに対応する安定多収な茶品種の育成と安定生産技術の開発
- 中課題整理番号:142f0
- 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動)
- 研究期間:2004~2013年度
- 研究担当者:山田龍太郎、荒木琢也、松尾喜義、角川修、深山大介、荒木慎介(フルタ電機株式会社)
- 発表論文等:
1)荒木ら(2008)茶業研究報告、106:15-20
2)荒木ら(2010)茶業研究報告、110:1-8