疫病・青枯病複合抵抗性台木用トウガラシ品種候補、安濃交1号および安濃交2号

要約

トウガラシ安濃交1号と安濃交2号は、疫病と青枯病に強度の抵抗性を有する。トウガラシ安濃交1号はトバモウイルス抵抗性遺伝子(L遺伝子)としてL4を持ち、安濃交2号は持たない。いずれも、L遺伝子が同種のトウガラシ類の台木として利用できる。

  • キーワード:台木用トウガラシ、疫病、青枯病、トバモウイルス、抵抗性品種
  • 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

疫病と青枯病は、わが国のピーマン・トウガラシ類の栽培において、大きな被害を及ぼす土壌伝染性病害である。現在、農研機構野菜茶業研究所で育成した「台パワー」などの疫病・青枯病に強度の複合抵抗性を示す台木用品種の普及が進められているが、これらの品種は、トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)などトバモウイルスに対する抵抗性遺伝子としてL3を有するため、穂木用品種にL4を持つ品種およびトバモウイルスの抵抗性を持たない品種の台木として用いると、トバモウイルスに感染したときに急激に萎凋する可能性がある。そのため、疫病と青枯病に対して抵抗性を有し、トバモウイルス抵抗性としてL4を持つ品種およびトバモウイルス抵抗性を持たない品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • トウガラシ安濃交1号は、種子親に疫病・青枯病・PMMoV(P1.2)抵抗性品種「台パワー」、花粉親に疫病・青枯病・PMMoV(P1.2.3)抵抗性系統トウガラシ安濃5号を用いて交配したF1系統である(図1)。
  • トウガラシ安濃交2号は、種子親に疫病・青枯病抵抗性系統トウガラシ安濃2号、花粉親に疫病・青枯病抵抗性系統CBP-3を用いて交配したF1系統である(図1)。
  • トウガラシ安濃交1号は、疫病と青枯病に強度抵抗性を示し、PMMoV(P1.2.3)に抵抗性を示すL4を有する。台木として使用した場合の穂木用品種「スペシャル」の収量は「台パワー」を台木とした場合や「スペシャル」を自根栽培した場合と同等である(表1、表2)。
  • トウガラシ安濃交2号は、疫病と青枯病に強度抵抗性を示し、トバモウイルスに対する抵抗性がない。台木として使用した場合の穂木用品種「京鈴」の収量は「スケットC」を台木とした場合や「京鈴」を自根栽培した場合と同等である(表1、表2)。

成果の活用面・留意点

  • 穂木用品種にカラーピーマン(パプリカ)などL4を持つ品種を用いる場合はトウガラシ安濃交1号、在来トウガラシなどトバモウイルス抵抗性を持たない品種を用いる場合はトウガラシ安濃交2号を台木に用いる。
  • 両系統とも、疫病と青枯病に対して強度抵抗性を示すが、病原菌の菌密度が高い圃場での栽培など、条件によっては発病する可能性があるため、土壌消毒など他の防除法を併用することが望ましい。

具体的データ

図1,表1

その他

  • 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
  • 中課題整理番号:141f0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動B-3系)
  • 研究期間:1991~2013年度
  • 研究担当者:松永啓、齊藤猛雄、斎藤新
  • 発表論文等:
    1)松永ら 安濃交1号 品種登録出願 2014年6月6日(第29264号)
    2)松永ら 安濃交2号 品種登録出願 2014年6月6日(第29262号)