イチゴ炭疽病抵抗性に連鎖するDNAマーカー
要約
「いちご中間母本農2号」の炭疽病抵抗性は寄与率の大きいひとつのQTLに支配され、2つのSTSマーカーを用いて選抜できる。
- キーワード:イチゴ、イチゴ炭疽病抵抗性、DNAマーカー
- 担当:日本型施設園芸・野菜ゲノム利用技術
- 代表連絡先:電話 050-3533-3861
- 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
イチゴの主要品種の多くは重要病害であるイチゴ炭疽病に対する抵抗性をもたないため、炭疽病抵抗性品種の開発が求められており、炭疽病抵抗性個体の効率的な選抜手法が必要である。そこで、イチゴ炭疽病抵抗性素材である「いちご中間母本農2号」のイチゴ連鎖地図を作成し、炭疽病抵抗性の量的遺伝子座(QTL)と連鎖するDNAマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
- 作成した「いちご中間母本農2号」の連鎖地図は、2016マーカーで構成され、連鎖群数30、全長2019cM、マーカー間平均遺伝距離3.1cMである(図1)。
- 「いちご中間母本農2号」の炭疽病抵抗性は、連鎖地図の第23連鎖群上に検出される寄与率の大きいひとつのQTLに支配される(図2)。
- 「いちご中間母本農2号」と罹病性品種「さちのか」とのF1集団において、QTLピーク近傍に座乗するマーカー(IA200826、IA202631)の遺伝子型と炭疽病抵抗性は強い関連性を示す(図3)。
- この寄与率の大きいQTLによる炭疽病抵抗性は、QTLピーク近傍のマーカーを改良した完全連鎖する2つのSTSマーカーを用いて選抜できる(図4)。
成果の活用面・留意点
- 本成果情報のSTSマーカーを他のイチゴ炭疽病抵抗性素材に利用する場合は、有効性の確認が必要である。
- 本DNAマーカーを用いた育種選抜法は特許出願中のため、育種選抜への利用には許諾が必要である。
- 連鎖地図作成には、特許情報(特開2011-120558)に記載のマイクロアレイを用いた高効率マーカー作製・検出技術を用いている。
具体的データ
その他
- 中課題名:野菜におけるゲノム情報基盤の構築と利用技術の開発
- 中課題整理番号:141g0
- 予算区分:共同研究(トヨタ自動車)、交付金
- 研究期間:2010~2013年度
- 研究担当者:布目司、野口裕司、榎宏征(トヨタ自動車(株))、水藤百江(トヨタ自動車(株))、西村哲(トヨタ自動車(株))、宮武宏治、山口博隆、大山暁男、福岡浩之
- 発表論文等:榎ら「イチゴ属植物の炭疽病抵抗性関連マーカーとその利用」特願2013-186688