家畜ふん堆肥の単年施用によるホウレンソウの可食部カドミウム濃度低減

要約

黒ボク土を用いたホウレンソウのポット栽培試験では、家畜ふん堆肥(4t/10a相当量)を単年施用しても、土壌中の可給性が高い交換態カドミウムの濃度低下により可食部カドミウム濃度が低減する。

  • キーワード:ホウレンソウ、カドミウム、家畜ふん堆肥、交換態カドミウム、全炭素
  • 担当:食品安全信頼・カドミウムリスク低減
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜生産技術研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

野菜のカドミウム(Cd)濃度の国際基準値が定められたが、いくつかの野菜品目では可食部Cd濃度が高まりやすく、この基準値を超過しやすいことが明らかにされている。そのため、それらの品目についての低減技術の開発が求められている。ホウレンソウについては、牛ふん堆肥や豚ぷん堆肥を連用した圃場で栽培すると、可食部Cd濃度が低下することが示されているが、単年施用の効果は明らかにされていない。そこで、家畜ふん堆肥の単年施用によるCd濃度低減効果を明らかにし、ホウレンソウの可食部Cd濃度低減技術の開発に資する。

成果の内容・特徴

  • 黒ボク土(0.1M塩酸抽出Cd濃度:0.11mg/kg)に表1の家畜ふん堆肥をそれぞれ4t/10a相当量混合施用し、ホウレンソウをポット栽培すると、地上部新鮮重は無施用と同程度であるが、可食部Cd濃度は無施用と比べて25~40%程度低減する(図1)。
  • 黒ボク土における家畜ふん堆肥の単年施用により、収穫後の土壌中の全炭素含量は発酵豚ぷんや発酵鶏ふん施用で高く、可給性の高い交換態Cdの濃度は発酵豚ぷんや発酵鶏ふん施用で低い傾向が認められる(表2)。
  • 家畜ふん堆肥の単年施用による収穫後の土壌pHは無施用と変わらないため、土壌有機物の増加に伴うCd吸着による可給性の低下がホウレンソウの可食部Cd濃度低減に関与すると考えられる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 家畜ふん堆肥の単年施用でもホウレンソウのCd濃度低減効果が期待でき、生産段階でのリスク低減に活用できる。
  • ポット栽培試験による結果であるため、圃場栽培における効果については検証が必要である。
  • 土壌タイプ、家畜ふん堆肥の原料(畜種、ロット等)および製造方法(副資材の有無等)の違いにより、Cd濃度低減効果は異なる可能性がある。

具体的データ

図1,表1

その他

  • 中課題名:農産物の生産段階におけるカドミウムのリスク低減技術の開発
  • 中課題整理番号:180b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2007~2011年度
  • 研究担当者:菊地 直、三浦憲蔵
  • 発表論文等:菊地(2012)野菜茶研報、11:107-118