寒候期キャベツの結球重増加モデル

要約

日日射量と日平均気温、栽植密度を入力条件として推定する寒候期キャベツの結球重増加モデルは、結球開始期時点での推定で相対誤差約16%、収穫約40日前の実測結球重入力で相対誤差約9%の適合度で結球部生体重をシミュレートできる。

  • キーワード:キャベツ、生育モデル、結球重、シミュレーション
  • 担当:業務需要畑野菜作・野菜周年安定生産
  • 代表連絡先:電話029-838-8973
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜生産技術研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年需要が伸びている契約栽培による加工・業務用キャベツ生産では、定時定量出荷が求められており、計画生産・出荷のために、生育予測技術に対する要請は強い。そのためには、生育、特に結球肥大に及ぼす環境条件の影響の定量的解明が重要である。しかし、ポットで栽培したキャベツは圃場条件下とは大きく異なる肥大特性を示すこと、解体調査に多数の個体が必要であることなどから、環境制御装置を用いた実験は困難で、環境条件の変動が大きい圃場試験結果を用いざるを得ない。そこで、生育モデルを用いた仮説の設定・検証により、キャベツの生育および結球肥大特性の定量的解析を行い、結球重増加を推定できるモデル開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 地上部乾物重日増加量は(DIR:植物体が遮蔽した日射量)×(RUE:日射利用係数)、結球部乾物重の日増加量は(地上部乾物重日増加量)×(DDH:結球部への乾物分配率)、結球部生体重の日増加量は(結球部乾物重の日増加量)×(FDH:結球部の乾物重増加量あたりの生体重増加量)とするもので、シミュレーション開始時点は結球開始期以降である(図1)。
  • RUEは、日平均気温の関数(5°C近辺から低減)、DDHは結球葉数の関数(結球葉数の増加に伴い向上)、FDHは日平均気温の関数(低温ほど低い)としている。
  • パラメータ決定には、所内試験と生産者圃場からのサンプリングデータを用いた(表1)。
  • 結球開始期の実測値を初期値としたシミュレーションでの相対誤差平均は、地上部乾物重4.2%、結球部乾物重9.8%、結球部生体重15.4%であった(図2上)。また、クロスバリデーションを行った場合の相対誤差平均にも、大きな違いはなかった。
  • 収穫約40日前の時点での結球部生体重を初期値としてシミュレーションを行うことにより、結球部生体重の相対誤差平均は9.2%に向上する(図2下)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は寒玉系キャベツ品種「松波」(石井育種場)を用いて得られたものである。
  • 生育・出荷出荷予測、作柄判定などの生産現場で活用できる。例えば、「出荷予測によるキャベツ産地間リレー出荷策定支援アプリケーション」(平成27年度普及成果情報候補)のモデル部に本モデルを組み込むことによるアップグレードに活用可能である。このほか、温暖化影響評価予測や出荷予測などにも活用可能である。
  • 土壌水分条件、栄養条件は扱っていないため、極端な多雨・少雨条件や、極端な減肥栽培条件下での適用には注意が必要である。

具体的データ

その他

  • 中課題名:葉根菜類の加工・業務需要に対応できる周年安定生産システムの開発
  • 中課題整理番号:113a4
  • 予算区分:交付金、委託プロ(先端プロ)
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:岡田邦彦、佐々木英和
  • 発表論文等:
    岡田、佐々木(2016)野茶研報、印刷中