春夏季に安定生産可能な短葉性ネギ品種候補、安濃交3号および安濃交6号

要約

短葉性品種ネギ安濃交3号は、極晩抽性で5~6月収穫の作型における収量が「ゆめわらべ」より多い。ネギ安濃交6号は、7~9月収穫の作型において葉鞘肥大が速く、形状がよく揃い、秀品収量が多い。

  • キーワード:ネギ、短葉性、良食味、晩抽性、周年供給
  • 担当:業務需要畑野菜作・露地野菜品種開発
  • 代表連絡先:電話050-3533-4605
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

短葉性ネギは、短い葉鞘で収穫することにより短期・省力的に栽培でき、コンパクトなサイズによる利便性や軟らかく食味の良い点などで消費者のニーズにも合致する新しいタイプのネギである。短葉性ネギ品種としてはこれまで、「ふゆわらべ」(2011年品種登録)および「ゆめわらべ」(2014年品種登録)を育成してきたが、春夏季の生産は抽苔の発生や高温期の形状劣化が問題となり困難であった。そこで、短葉性ネギの周年供給体制を確立し、需要の定着を図るため、春夏季どり栽培に適応する品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • ネギ安濃交3号(図1a)は、極晩抽性で短葉の細胞質雄性不稔系統MSS-TA-4を種子親、短葉で葉鞘肥大の速いTAM-3を花粉親とするF1品種である。ネギ安濃交6号(図1b)は、葉鞘肥大が旺盛な細胞質雄性不稔系統MSN-TAM-1を種子親、MSS-TA-4の維持系統でもあるTA-4を花粉親とするF1品種である。
  • ネギ安濃交3号は、「ふゆわらべ」および「ゆめわらべ」より抽苔開始期が遅く、9月中旬以降に播種した場合、5~6月にほとんど抽苔発生がなく収穫に至り(図2)、両品種より収量が多い(表1)。「ゆめわらべ」より葉身・葉鞘は短く、葉鞘径は太く、葉身分岐部(襟部)の締まりや形状の揃いも優れる(表1)。
  • ネギ安濃交6号は、冬まき夏どりの作型において「ふゆわらべ」および「ゆめわらべ」より葉身は短く、葉鞘径が太く、襟部の締まりや形状の斉一性に優れ、秀品率、秀品収量が高い(表2)。
  • 両品種の葉身、葉鞘は、一般の根深ネギ品種より軟らかく、辛味程度の指標であるピルビン酸生成量は「ゆめわらべ」並みに低い(表1、2)。

成果の活用面・留意点

  • 両品種を用いることにより、小型で葉身部まで軟らかい短葉性ネギの春夏季の生産が可能となる。
  • ネギ安濃交3号は、冬季積雪のない温暖地または暖地において9~10月に播種し、5~6月に収穫する露地栽培またはトンネル栽培に適する。
  • ネギ安濃交6号は、12~3月に播種し、7~9月に収穫する露地栽培に適する。
  • 両品種ともに冬季間葉先が黄化し、早春は伸長が遅く、葉身部が変形することがある。
  • 両品種の種子の生産・販売は民間種苗会社に許諾する予定であるが、それまでの間、農研機構から原種苗提供契約により供給可能である。

具体的データ

その他

  • 中課題名:露地野菜の高品質・安定供給に向けた品種・系統の育成
  • 中課題整理番号:113b0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(実用技術)
  • 研究期間:2009~2015年度
  • 研究担当者:若生忠幸、山下謙一郎、塚崎光、藤戸聡史
  • 発表論文等:
    1)若生ら 品種登録出願第31274号(2016年6月28日)
    2)若生ら 品種登録出願第31277号(2016年6月28日)