匂わず黄変しないダイコン品種「悠白」と「サラホワイト」
要約
「悠白」と「サラホワイト」は加工品の臭いや黄変の原因となる4-メチルチオ-3-ブテニルグルコシノレートを含まないF1品種である。「悠白」は漬物原料用に、「サラホワイト」は大根おろし等の生食加工や切り干しの原料用に適する。
- キーワード:成分育種、加工業務用、イソチオシアネート、辛味、発色
- 担当:業務需要畑野菜作・露地野菜品種開発
- 代表連絡先:電話050-3533-4605
- 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
従来のダイコンを加工すると、独特のたくあん臭(大根臭)が生じ、黄色く発色する。近年、この臭いや黄変はフレッシュ感が喪失した特性として一般消費者から敬遠されることが多く、加工品によっては品質低下の大きな要因となっている。そこで、たくあん臭や黄変の元となる4-メチルチオ-3-ブテニルグルコシノレート(4MTB-GSL)を含まない「だいこん中間母本農5号」(2013年品種登録)を用いて、加工業務用途に適した実用性の高い品種の育成を行う。
成果の内容・特徴
- 「悠白」と「サラホワイト」はDNAマーカー選抜技術を用いて育成した白首のF1品種である(図1)。何れも従来のダイコンに多く含まれるグルコシノレート成分の一種、4MTB-GSLを含まず、グルコエルシンを優占的に含んでいる。総グルコシノレート含量は既存の品種に比べて何れも少なくなっている(表1)。
- 「悠白」は肉質が緻密で漬物原料に適している。本品種を原料としたたくあん漬では、たくあん臭や黄変が生じない。
- 「悠白」は秋播き秋冬どり作型に適している。「秋まさり2号」に比べると生育がやや緩慢なため、収穫を「秋まさり2号」より数日遅らせることでたくあん漬原料用として必要な根重1,100g以上になる(表2)。
- 「サラホワイト」は大根おろしや切り干し等の加工原料に適している。本品種を原料とした大根おろしや切り干し大根では、たくあん臭が生じず、製造後一年間冷凍貯蔵しても黄変しない。
- 「サラホワイト」は秋播き冬どり作型に適している。「耐病総太り」に比べると生育が緩慢であるが、す入りは遅く、収穫を「耐病総太り」より遅らせることで加工用原料として必要な1,800g以上になる。また、肉質が硬く、乾物率が高いため、加工適性に優れる(表3)。
成果の活用面・留意点
- 本品種を用いることにより、ダイコン特有の臭いや発色を伴わない新たな加工品の創出が可能である。
- 「悠白」は、関東以西の温暖地では9月上中旬に播種し、11月下旬~12月上旬に収穫する作型に適する。
- 「悠白」は根部を肥大させすぎるとす入りが生じやすいことから、根重1,000~1,200g程の適期に収穫する。
- 「サラホワイト」は、関東以西の温暖地では9月上中旬に播種し、11月下旬~1月上旬に収穫する作型に適する。
- 両品種ともに遅播きすると生育が著しく遅延することから、適期播種に努める。
具体的データ
その他
- 中課題名:露地野菜の高品質・安定供給に向けた品種・系統の育成
- 中課題整理番号:113b0
- 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
- 研究期間:2005~2015年度
- 研究担当者:石田正彦、柿崎智博、小原隆由、吹野伸子、小堀純奈、畠山勝徳、吉秋斎、寺田保(渡辺農事(株))、菊地貴(渡辺農事(株))、李積軍(渡辺農事(株))
- 発表論文等:
1)石田ら「悠白」品種登録出願第30433号(2015年9月3日)
2)石田ら「サラホワイト」品種登録出願第30434号(2015年9月3日)