キュウリ黄化えそ病抵抗性を支配するQTLの同定および選抜マーカー

要約

キュウリ系統27028930が有する黄化えそ病抵抗性には3個のQTLが関与する。うち第3染色体に検出されたQTL近傍のDNAマーカーを用いることで、黄化えそ病抵抗性「きゅうり中間母本農7号」と罹病性品種との交雑後代から抵抗性個体を選抜できる。

  • キーワード:キュウリ、黄化えそ病抵抗性、QTL解析、DNAマーカー
  • 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発
  • 代表連絡先:電話050-3533-4608
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

キュウリ黄化えそ病は、メロン黄化えそウイルス(MYSV)を病原とするウイルス病で、ミナミキイロアザミウマにより媒介される。本病に抵抗性を有するキュウリ品種はないため、九州、四国、東海および関東地域のキュウリ産地に深刻な被害を及ぼしており、その発生地域は拡大している。農研機構は、東南アジア原産のキュウリ系統27028930が黄化えそ病に対して中程度の抵抗性を示すことを見いだしたが、本系統が有する黄化えそ病抵抗性の遺伝様式は未解明であった。そこで、キュウリ系統27028930が有する黄化えそ病抵抗性のQTLを同定するとともに、抵抗性個体を選抜できるDNAマーカーを開発する。

成果の内容・特徴

  • 黄化えそ病抵抗性キュウリ系統27028930と罹病性「ときわ」との交雑F2世代92個体を供試して、黄化えそ病抵抗性検定で得られた結果(データ省略)をもとにQTL解析を行うと、キュウリ系統27028930由来の黄化えそ病抵抗性に関与する3個のQTLと「ときわ」由来の1個のQTLが検出される(図1)。
  • キュウリ系統27028930を素材として育成された黄化えそ病抵抗性「きゅうり中間母本農7号」と罹病性「きゅうり中間母本農4号」との交雑F2個体を供試して、黄化えそ病抵抗性検定を行うと、キュウリ系統27028930由来の第3染色体に検出されたQTL(Swf-2)近傍のDNAマーカー(SSR31430)の遺伝子型が「きゅうり中間母本農7号」型ホモである集団の発病評点は他の集団に比べて低く、加えて、第1染色体に検出されたQTL(Swf-1)近傍のDNAマーカー(SSR20705)の遺伝子型が「きゅうり中間母本農7号」型ホモである集団の発病評点が最も低い傾向にある(表1)。
  • 「きゅうり中間母本農7号」と罹病性品種との交雑後代から黄化えそ病抵抗性個体を選抜するためのDNAマーカーとして、SSR31430近傍のCSN251、SSR7225およびCSN161も利用できる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 「きゅうり中間母本農7号」と同等の抵抗性を持つ個体を選抜するためには、複数の抵抗性関連遺伝子の集積が必要であり、マーカー選抜に加えて抵抗性検定による選抜を合わせて行う必要がある。
  • SSR20705、SSR31430およびSSR7225の情報は、Ren et al. (2009) PLoS ONE 4:e5795、CSN161およびCSN251の情報は、Fukino et al. (2008) Breed Sci 58:475-483に記載されている。

具体的データ

その他

  • 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
  • 中課題整理番号:141f0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)
  • 研究期間:2009~2015年度
  • 研究担当者:杉山充啓、川頭洋一、吹野伸子、吉岡洋輔、下村晃一郎、坂田好輝、奥田充
  • 発表論文等:
    Sugiyama M. et al. (2015) Euphytica 205:615-625
    杉山ら(2016)野菜茶研研報、15:1-10