被覆栽培に適した高品質な緑茶用新品種「せいめい」

要約

「せいめい」は色沢と滋味に優れ、「やぶきた」より摘採期が早い、やや早生品種である。「せいめい」は「やぶきた」、「さえみどり」と比べ、露地および被覆栽培で収量・品質が優れ、特に被覆栽培での高品質緑茶の製造に適する。

  • キーワード:チャ、せいめい、高品質、被覆栽培
  • 担当:果樹・茶・茶
  • 代表連絡先:電話029-838-6543
  • 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

現在、実需者から「やぶきた」とは異なる香味の新品種が求められている。さらに、国内外で需要が増加している抹茶・粉まつ茶の原料茶栽培に必須な被覆栽培に適した高品質緑茶品種の開発が急務とされる。そこで、被覆栽培条件下でも、収量が多く、色沢と旨味に優れた高品質な緑茶用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「せいめい」は樹勢強で多収の「ふうしゅん」を種子親、早生で製茶品質に優れる「さえみどり」を花粉親として、1992年に交配したF1実生群の中から選抜した(図1)。一番茶新芽は鮮緑で、芽揃いに優れる(図2)。
  • 「せいめい」の樹姿はやや直立型、樹勢はやや強で、「やぶきた」比で一番茶萌芽期が-5日、摘採日が-4日のやや早生品種である(表1)。生葉収量は全茶期を通じて「やぶきた」と「さえみどり」より多い。製茶品質は全茶期を通じて「さえみどり」より優れる(表1)。水色は青みを帯び、二番茶以降も夏茶臭が感じられず、滋味にうまみが感じられる。
  • 「せいめい」の赤枯抵抗性は「中」で、「やぶきた」よりやや劣り、裂傷型凍害抵抗性は「やや強」で、「やぶきた」より強い(表1)。
  • 「せいめい」は炭疽病には「中~やや弱」、輪斑病に「強」、赤焼病に「中」、もち病に「やや強」の耐病性である(表1)。クワシロカイガラムシは「やぶきた」並に発生が認められる。
  • 85%遮光素材を用い、一番茶で15日、二番茶で7日の直掛け被覆を行うと、「せいめい」の葉色は濃緑色となり、SPAD値が露地栽培に比べ向上する。被覆栽培の場合の収量と製茶品質は「やぶきた」、「さえみどり」より優れ、被覆適性を有する(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 「せいめい」は関東以南の栽培に適している。なお、寒冷地での摘採期は「やぶきた」と同等もしくは1日程度遅い。本系統は被覆適性を有し、高品質な抹茶や粉まつ茶等の原料茶、かぶせ茶および煎茶に適する。
  • 「せいめい」の抹茶・粉まつ茶への加工適性について、農食事業「実需者が求める、色・香味・機能性成分に優れた茶品種とその栽培・加工技術の開発」で研究が進められており、品種登録出願公表と同時に栽培・加工技術マニュアルを作成し、配布する。

具体的データ

その他

  • 中課題名:多様なニーズに対応する安定多収な茶品種の育成と安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:142f0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:吉田克志、根角厚司、荻野暁子、谷口郁也、萬屋宏、佐波哲次
  • 発表論文等:吉田ら(2017)「せいめい」品種登録出願公表.2017年1月30日(第31289号).