チャ赤焼病の発病抑制可能な銅剤事前散布法に適する銅水和剤とマシン油乳剤

要約

チャ赤焼病初発茶園で銅水和剤を散布3~7日後に、マシン油乳剤を散布する銅剤事前散布法では、水酸化第二銅水和剤と塩基性硫酸銅水和剤(硫酸銅71.2%)の防除効果が高い。銅水和剤散布後はマシン油98%乳剤の使用が適している。

  • キーワード:チャ、赤焼病、銅剤事前散布法、銅水和剤、マシン油
  • 担当:果樹・茶・茶
  • 代表連絡先:電話029-838-6543
  • 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

チャ赤焼病の初発茶園で、チャトゲコナジラミ防除の為にマシン油乳剤を散布すると、赤焼病の発病が著しく助長される。マシン油乳剤散布前に銅水和剤を散布する銅剤事前散布法は、マシン油乳剤による赤焼病発病助長を抑制できる。異なる銅水和剤とマシン油乳剤を事前散布法に供試し、マシン油乳剤による赤焼病発病助長の抑制効果が高い銅水和剤とマシン油乳剤の組み合わせを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 銅剤事前散布法では、銅水和剤によって防除効果に違いがある。銅水和剤6剤(塩化銅水和剤(塩化銅73.5%)、水酸化第二銅水和剤(水酸化第二銅46.1%)、硫酸銅水和剤A(硫酸銅71.2%)、硫酸銅水和剤B(硫酸銅23.0%)、硫酸銅水和剤C(硫酸銅28.1%)、イミノクタジン酢酸塩・銅水和剤(イミノクタジン酢酸塩2.5%、塩化銅73.5%))とマシン油97%乳剤(O社)の防除試験では、水酸化第二銅水和剤、硫酸銅銅水和剤A、塩化銅水和剤および硫酸銅水和剤Bの発病葉数が少なく、対マシン油区防除率は50%以上である(表1)。この中で、水酸化第二銅水和剤と硫酸銅銅水和剤Aは他の銅水和剤試験区より有意に収量が多い(表1)。従って、水酸化第二銅水和剤と硫酸銅銅水和剤Aが銅事前散布法に適する。
  • 銅剤事前散布法では、マシン油乳剤によって防除効果に違いがある。マシン油98%乳剤(N社)とマシン油97%乳剤および塩基性硫酸銅水和剤Aを用いた防除試験では、表2に示す通り、事前散布区におけるマシン油98%乳剤およびマシン油97%乳剤の防除率は1月31日までは同等であるが、2月1日の銅水和剤の追加散布後は、マシン油98%乳剤の防除率が高く、SPAD値と収量は、健全区および防除区と有意差が無い。一方、マシン油乳剤区における1月31日までの両剤の発病葉数は同等であるが、2月28日以降はマシン油98%乳剤の発病葉数が少ない(表2)。従って、マシン油98%乳剤が銅剤事前散布法に適する。

成果の活用面・留意点

  • 水酸化第二銅水和剤と塩基性硫酸銅水和剤Aは従来の銅水和剤よりも薬剤粒子が小さく、葉面に均一に付着する特徴を持つ。
  • マシン油98%乳剤は散布1か月後には油膜がほぼ消失し、銅水和剤を散布すると均一に付着するが、マシン油97%乳剤では油膜が残存しており、均一に付着しない。両剤の添加剤の違いが、油膜の残存期間と薬剤付着に影響し、両剤の赤焼病の発病差が生じる。
  • 水酸化第二銅水和剤と硫酸銅水和剤Aおよびマシン油98%乳剤はJAS有機栽培で使用できる。

具体的データ

その他

  • 中課題名:多様なニーズに対応する安定多収な茶品種の育成と安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:142f0
  • 予算区分:交付金、その他外部資金(受託資金)
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:吉田克志
  • 発表論文等:
    1)吉田(2015)九病虫研会報、61:20-25
    2)吉田(2015)植物防疫、69:671-676
    3)吉田(2016)(一社)九州病害虫防除推進協議会H27茶樹連絡試験成績書