チャ品種「そうふう」「さえみどり」は機能性成分ケルセチン配糖体が多い

要約

既存緑茶品種の中では「そうふう」と「さえみどり」の2品種が、主力品種「やぶきた」に比べてケルセチン配糖体を特に多く含む。ケルセチン配糖体は一心一葉と茎には少なく、熟した葉に多く含まれる。

  • キーワード:「そうふう」、「さえみどり」、ケルセチン配糖体
  • 担当:食品機能性・生体防御利用技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

食品による健康維持への関心は高く、食品に含まれる様々な健康機能性成分の生理作用が盛んに調べられている。その中でもポリフェノールの生理活性は比較的よく研究されており、その代表的なものに緑茶に多く含まれるカテキンとタマネギなどに多く含まれる「ケルセチン」がある。カテキンとケルセチンはどちらもフラボノイドの一種であり、高い抗酸化能を持つ物質としてよく知られる。カテキンとケルセチンの生理活性機能は全てが同じではなく、カテキンではカテキン受容体を介した抗炎症作用や抗腫瘍活性が報告されており、ケルセチンでは血管を保護する血管内皮機能の改善効果等が報告されている。茶はカテキンだけでなくケルセチンの摂取源にもなりうる食品の一つとして考えられているが、品種間で含有量が異なる可能性がある。そこで、すでに品種として登録されている茶品種のケルセチン含有量を調査し、高含有品種を検索する。

成果の内容・特徴

  • 「そうふう」、「さえみどり」は「やぶきた」と比べてケルセチン配糖体を約2.5倍多く含む(表1)。2007年の二番茶の茶葉(一心四葉摘み)の場合、茶葉の40倍量の水で浸出(4°C、1時間)した場合100 mL中に12-13 mgのケルセチン(アグリコン換算)が含まれている。一般的なタマネギ100 g(新鮮重量)に含まれるケルセチンは約40 mg(アグリコン換算)。
  • ケルセチン配糖体は一心一葉と茎には少なく、二または三葉以下の熟した葉に多く含まれる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 今回調べた以外の品種にもケルセチン配糖体が多く含まれる可能性がある。
  • 葉位によりケルセチン配糖体含有量が変わることから、例えば、茎を使った茎茶、棒茶、雁(かりがね)や芽の部分を集めた芽茶などと表記された製品は他の煎茶に比べて含量が低い可能性が高い。
  • 茶のケルセチン配糖体の標準品が市場に出回っていないため、現在のところ一般に定量測定をすることは難しい。
  • 緑茶を摂取することによるケルセチン配糖体の健康機能性を含めた生体内利用については今後エビデンスを蓄積する必要がある。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:生体防御作用に関する健康機能性解明と有効利用技術の解明
  • 中課題整理番号:310c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:物部真奈美、野村幸子、松永明子
  • 発表論文等:Monobe M. et al. (2015) Food Sci. Technol. Res. 21(3):333-340