ため池堤体の新しい漏水量測定法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

老朽ため池の地下水流向流速計(比抵抗方式)による漏水の流速又は土の透水係数を測定し、赤外線温度解析装置による漏水面積の測定を行い、それぞれの値から計算で漏水量を算出する方法である。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・基盤整備研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:農業工学・傾斜地農業
  • 専門:基幹施設
  • 対象:農業工学(維持・管理技術)
  • 分類:普及

背景・ねらい

ため池はたいへん古くから作られたため、老朽化により漏水が発生しているため池が多い。老朽ため池改修事業で改修を行っているが、その事業採択基準の1つに漏水量がある。しかし、現状の漏水量測定法では測定しにくかったり、測定できない場合がある。そのため、漏水量を測定する方法として、新しい測定機械を使った方法を提案するが、堤体に穴を堀り、漏水の流速や土の透水係数を測定し、漏水面積より計算する方法である。

成果の内容・特徴

  • 漏水面積は、赤外線温度解析装置により漏水と認められた表示範囲とする(平成4年度研究成果情報)。
  • 第1の方法は、図-1に示すような原理で、ため池堤体に直径10cmの穴を堀り、地下水流向流速計で漏水の流速を測定する。漏水面積に流速を掛けて漏水量を算出する。漏水の流速測定は比抵抗の異なる試験溶液(蒸留水)を測定器中央に流し、センサー(電極)間の比抵抗値の変化を測定し、時間経過による各電圧の変化から流速が測定できる。
  • 一方、第2の方法は、堤体に直径10cmの穴を漏水以下まで堀り、穴に水を加え、経過時間と水位測定器で水面の低下を測定し、土層の透水係数を算出する(オーガホール法)。この透水係数と漏水面積を掛けて透水量を算出し、これを漏水量とする。
  • 2種類の方法で得られた漏水量を従来の三角堰流量計で測定した漏水量と比較した。その結果を表-1に示すようにほぼ一致し実用に耐えうる。なお、結果から正確に値がでているとの確証がないので、なるぺく多くの方法で行った方が良い。

成果の活用・留意点

  • 漏水形態が面的な場合に適用できるため、漏水が特定の場所に集中している場合には適用しにくい。また、測定に当たって堤体の草刈りが必要である。
  • 穴を掘る場合には一般にボーリング機械で行うが、ハンドオーガでも5m程度は可能である。しかし、地下水が高いと土によって掘れない場合もある。

具体的データ

図-1.地下水流速測定原理

 

表-1.漏水量測定結果

 

その他

  • 研究課題名:新素材による斜面安定化工法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度(平成2~5年)
  • 研究担当者:山下恒雄、吉迫宏
  • 発表論文等:吉迫宏・山下恒雄:ため池漏水調査への赤外線温度解析装置の利用:平成4年度農土学会大会講演要旨:平4.8