土壌・水保全を目指した傾斜樹園地の土壌表面管理
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要約
敷ワラ及びバーミューダグラス草生による土壌表面管理により、ミカン・茶等の傾斜樹園地からの肥料と雨水の地表流出量、土壌侵食量をごく低レベルに抑えることができる。
- 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・環境管理研究室
- 連絡先:0877-62-0800
- 部会名:生産環境・傾斜地農業
- 専門:環境保全
- 対象:果樹類・工芸作物
- 分類:指導
背景・ねらい
四国の急傾斜樹園地では、夏期の強雨による土壌侵食防止を主目的とした敷ワラ(敷草)は、慣行技術であったが、資材・労力不足から現在は施用は減少している。敷ワラや草生管理は、生産力の維持のみでなく、土壌や肥料分の流出による水質汚染の防止にも寄与している。この機能を定量的に把握・評価するため、傾斜ラインシータ(傾斜25度、斜面長3m、幅2m、深さ1.2~2.4m)を用いて、温州ミカンと茶を栽培作物として試験を行った。
成果の内容・特徴
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バーミューダグラスは、一番茶芽生育期、ミカンの開花期には、低温のため伸長少く、作物との養水分の競合はなく、平均気温24°Cを超す梅雨期から旺盛に生育し土面を被覆する。
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ミカンの幼木期に清耕区では、降水量に対し30%前後の地表流出水を生じたが、ミカン草生区のそれは10%前後、茶草生区と敷ワラの各区ではほぼ零にまで抑えられた。
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敷ワラおよび草生区では、作付け1年目から土壌の流出はほぼ零になった。一方、清耕区からは当初30t/ha以上の土壌の流出をみたが、年次の経過に伴い減少した(図1)。
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浸透水の降水量に対する割合は、敷ワラ管理で60~70%、次いで草生、清耕であった。
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窒素の全流出量に占める表面流出率は、25度の急傾斜の清耕区でも2~20%と少ないが、敷ワラや草生処理は、それらをさらに0~4%まで減少させた。
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窒素の流出は浸透水に伴うものが大半を占め、浸透水量の多い敷ワラ区で最大となった。また施肥量の多い茶区では、土壌表面管理の女何に関わらず流出量が多い(図2)。
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作物の生育量・収量については、初期には敷ワラ区が良く、草生区は、夏期の養水分吸収の競合による阻害的影響がみられ(表2)、ミカン区においては、後までその影響が残ったが、茶区では回復をみた(表3)
成果の活用面・留意点
傾斜樹園地での土壌侵食と肥料分の表面流出防止には、特に幼木期には、敷ワラ・草生管理が効果的である。しかし、草生管理には植物と草の養水分の競合に留意が必要である。また、水質汚染を考慮した施肥基準と施肥法の見直しが必要である。(表1)
具体的データ





その他
- 研究課題名:土壌侵食に及ぼす傾斜と土壌管理の影響
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成6年度(昭和62年~平成5年)
- 発表論文等:傾斜樹園地からの養水分流出-ライシメータ試験-,日本土壌
肥料学会関西支部講演会,第90回,1994.
傾斜樹園地の土壌侵食と養分流出について、平成6年度四国
土壌肥料協議会講演