木炭を利用した硝酸態窒素を吸着する資材
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要約
木炭を塩化鉄(III)溶液で浸漬処理することにより硝酸態窒素の吸着能が発現し、これを土壌に添加することにより土壌からの硝酸態窒素の流出が抑制された。
- 担当:四国農業試験場・生産管理部・土壌管理研究室
- 連絡先:0877-62-0800
- 部会名:生産環境(土壌肥料)
- 専門:土壌
- 対象:
- 分類:研究
背景・ねらい
農耕地に施用された窒素肥料の多くは硝酸態窒素として土壌から流出し、周辺の水系の汚染につながっている。日本の水道水の水質基準では硝酸態窒素は10ppm以下に規定されており、人体に対する悪影響も報告されている。硝酸態窒素は陰イオンとして負の荷電を持つため、これを化学的に吸着させて流出を抑制するためには、正の荷電を持つ担体の開発と利用が必要である。本研究では、木炭を塩化鉄(III)溶液で浸漬処理することによって硝酸態窒素を吸着する資材の開発を試みた。
成果の内容・特徴
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木炭を塩化鉄(III)溶液で浸漬処理し、蒸留水で洗浄後、軽く乾燥するだけの簡単な操作(図1)によって硝酸態窒素を吸着する資材となる。
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未処理木炭は硝酸態窒素をまったく吸着しないが、(1)で調製した木炭(以下:塩化鉄処理木炭)では明らかに硝酸態窒素を吸着する(図2)。
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塩化鉄処理木炭を土壌と均一になるように混合して浸透管に詰め、硝酸態窒素の浸透実験を行うと、未処理木炭を混合した場合に比べて硝酸態窒素の流出が約40%抑制される(図3)。
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塩化鉄処理木炭によって吸着された硝酸態窒素は、水よりも塩化カリウム溶液で多く抽出されるため(表1)、吸着された硝酸態窒素には正荷電による化学吸着によるものがかなり含まれると考えられる。
成果の活用面・留意点
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硝酸態窒素を吸着する資材を開発するための研究の端緒となる。
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硝酸態窒素の吸着効率をより高めるための木炭の処理方法の検討が必要である。
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木炭以外の無機質材についても探索と検討が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:扇状地型平野における「出水」を利用した硝酸態窒素の動態解明
- 予算区分 :重点基礎
- 研究期間 :平成6年度
- 発表論文等:(1)木炭の塩化鉄処理による硝酸イオン吸着能の発現(日土肥学会誌
投稿中)
(2)土壌に対する陰イオン交換資材の添加効果(第2報)-塩化鉄(III)
処理木炭の添加による土壌からのNO3-溶脱抑制-1995年度日本肥学会
講演要旨集、第41集、1995(発表予定)