行動から推定した黒毛和種新生子牛が人間を認知する時期

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要約

出生直後に黒毛和種子牛が人間と同居(非接触的)した時間とその後のハンドリング時の牛の落ち着き度との関係と、刷り込み様現象が見られた子牛の行動から推定すると、牛は生後2~3日目に人間の存在を活発に認知する。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・草地畜産研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:畜産
  • 専門:飼育管理
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

家畜への日常的な接触を必要としない周年放牧などの飼育体系は、労働時間を短縮し、低コストでの肉用牛生産を可能とするが、その反面、ハンドリングを伴う管理作業時には、人間に慣れていない牛が過敏な逃避行動や人間への攻撃行動を示すなどの問題も生じる。そこで、新生子牛に人間が接触した場合の行動的な所見から、牛と人間との関係が成立する時期を推定し、放牧牛の行動制御技術を開発するための基礎的所見とする。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種において、生後3日間に人間との非接触的な同居時間(人間が側にいた時間)が20時間以上では、3ヵ月齢における突発的なハンドリング時に62%の個体が高い落ち着き度(8以上)を示した。一方、同居時間が20時間未満では、落ち着き度の高い個体はなく、逆に激しい攻撃性を示しハンドリングが不可能な個体が見られた(図1)。
  • 特に、出生後2日目および3日目における人間との同居時間と、3ヵ月齢におけるハンドリング時の落ち着き度との間には強い相関関係(スピアマン順位相関)が認められた(表1)。
  • 出生直後に人間への刷り込み様現象が見られた牛に対して、その後7日間1日1回の誘導(牽引)を行うと、1日目は人間への追随に終始したが、2日目および3日目には突出して周辺環境に対する探索行動が増加し平均歩行速度が低下した。4日目以降は探索行動の減少に伴って平均歩行速度も上がった(図2)。
  • 以上の行動的な所見から、子牛は特に生後2~3日目に周辺環境に対して活発な探索行動を行い、この間に人間の存在を認知すると推定される。また、人間を認知した牛はその後の管理作業においても人間に対する極端な恐れを示さないと考えられる。

成果の活用面・留意点

子牛への早期学習訓練を利用した放牧牛の行動制御技術を開発する際の基礎資料として活用される。

具体的データ

図1 生後3日間における人間との同居時間と三ヶ月齢でのハンドのリング時の子牛の一月度との関係

図2 生後七日間のロープ誘導における子牛の探索行動と平均歩行速度の推移

その他

  • 研究課題名:学習訓練を利用した放牧牛の行動制御法の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成3~7年)
  • 発表論文等:(1)誕生直後の管理がその後の個体管理作業における子牛の落ち着き度
                          に及ぼす影響、日草誌、39巻(別)、1993。
                      (2)早期学習訓練および哺乳方法が牛の扱い易さに及ぼす影響 第1~
                         2報、日草誌、40巻(別)、1994。