水分ストレス下の根の形態・機能の変動解明によるマメ科植物の耐旱性評価
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要約
水分ストレス下の根の形態・機能の変動解明により、植物の耐旱性を明らかにする。土壌水分制御、萎凋過程の根系観察、培地の浸透圧上昇の3種の手法を用い、マメ科植物の耐旱性を比較したところ、同一の判定結果を得て、耐旱性評価に有効である。
- 担当:中国農業試験場・作物開発部・育種素材研究室、
畑地利用部・畑土壌管理研究室、
畑地利用部・施設栽培研究室
- 連絡先:23‐4100、0773‐42‐0109、0773‐42‐0109
- 部会名:作物生産
- 専門:生態
- 対象:豆類
- 分類:研究
背景・ねらい
培地の水分ストレスにともなう根の形態・機能の変動を解明し、植物の耐旱性を評価する技術を開発する。そのため、土壌水分制御、萎凋過程の根系観察、培地の浸透圧上昇の3つの手法を用いて、マメ科植物(クロタラリア、キマメ、ダイズ)の耐旱性の種間差を比較検討した。
成果の内容・特徴
- 土壌水分制御による耐旱性評価:土壌水分・温度制御装置を用い、地温30°Cの条件で土壌水分を-0.003~-0.04MPaに設定した。クロタラリア及びダイズは低水分区ほど根重、主根長及び分枝根数が劣る。これに対して、キマメは-0.04MPaまでの低水分条件では、ほとんど 生育低下が認められない(表1)。
- 萎凋過程の根系観察による耐旱性評価:根箱に土壌を充填し、播種時のみ給水し、萎凋過程の蒸散量の変化と根の形態観察を行った。ダイズの蒸散量は14日目以降著しく低下するが、クロタラリア、キマメの蒸散量は高い値を維持する(図1)。蒸散量の低下と並行して、ダイズの根の伸長は抑制されるが、クロタラリア、キマメの根は乾燥が進んでも伸長を続け、2次根まで発生する(表2)。
- 培地の浸透圧上昇による耐旱性評価:水耕幼植物をPEG(ポリエチレングリコール)添加培地に移植して水ストレスを与えた。水ストレスによる乾物重低下は、ダイズとクロタラリアが大きく、キマメは小さい。対照区を100としたPEG区の蒸散速度割合は、クロタラリアが11、ダイズが24、キマメが22である。PEG処理による葉、根の水ポテンシャルの低下度合はダイズが最も小さく、クロタラリアが次ぎ、キマメが大きい(表3)。
- このように、3種の異なる評価法を用いたマメ科植物の耐旱性の判定結果は、キマメ>クロタラリア>ダイズの順で、ほぼ同一の結論に達した。したがって、これらの手法は耐旱性評価に極めて有効である。
成果の活用面・留意点
培地の水分ストレス設定にあたっては、中程度までの乾燥条件には土壌水分・温度制御装置が、著しい低水分条件にはPEG法が適している。また非破壊的な根の伸長観察には根箱法が適している。
具体的データ




その他
- 研究課題名:植物地下部の形態と機能の解明による耐早性評価法に関する研究
- 予算区分 :地域流動(砂漠緑化)
- 研究期間 :平成6年度(平成3~5年)
- 研究担当者:作物開発部;白土宏之、吉田泰二、松井重雄、畑地利用部;掘 兼明、花田俊堆
- 発表論文等:1) 異なる温度環境下における土壌の水ポテンシャル変動について、熱農学会、37巻別1、1993.
2) 根箱法による熱帯マメ科植物の耐早牲の評価、熱農学会、38巻別2、1994.
3) 水ストレスが2,3の熱帯豆科植物の根の形態に与える影響、日作中支集録、34巻、1993.