被覆尿素施肥-再生紙マルチ栽培における水田の窒素動態
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要約
被覆尿素肥料を施用し再生紙マルチ栽培した水田では,水稲による窒素吸収量が増加し,施肥効率も高まる。また窒素の有機化量が増加し,脱窒量が減少するので,本栽培体系は省肥料とともに環境への窒素負荷の軽減にも役立つ。
- 担当:中国農業試験場・生産環境部・土壌管理研究室
- 連絡先:0849-23-4100
- 部会名:生産環境(土壌肥料)
- 専門:土壌・肥料
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
環境保全に留意しつつ省力化を目指した稲作技術が望まれる現在、除草剤の散布が不必要な再生紙マルチ栽培が大いに注目されている。そこで、被覆尿素肥料を全量基肥として施用した再生紙マルチ水田における窒素の動態をトレーサー法で追跡し、本栽培体系の特徴を施肥効率並びに環境負荷の両面から明らかにする。
成果の内容・特徴
所定量の被覆尿素肥料(シグモイド100日タイプ)を全量基肥として施用した再生紙マルチ区と対照区に,コシヒカリを3月下旬および6月中旬に移植(栽植密度15cm×30cm)し、以下の知見を得た。
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水稲による窒素の吸収は再生紙マルチ区で高まり、有機化量も増大する(図1)。一方、脱窒量は逆に減少する。移植期が異なっても同様な傾向を示す。
- 水稲の生育初期における窒素吸収量は処理区間で差異がなく、中~後期に差異が生じる(図2,図3)。
- 再生紙マルチ区の有機化量は全生育期間を通じ対照区より高まり、6月移植に比べ3月移植でより多い(図1,図2,図3)。
- 再生紙マルチ区で脱窒量が減少する理由として、無機化・溶出した窒素が再生紙の分解に利用されたことが推察される。
- 以上のように、再生紙マルチ栽培に被覆尿素肥料を活用することにより、施用効率が高まり、耕地・水系の環境保全にも寄与できる。
成果の活用面・留意点
被覆尿素肥料には溶出パターンの異なる種々のタイプがあり、効果を高めるには栽培時期、栽培品種、気象条件等に応じて選択する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:暖地水稲の省農薬・良食味・持続的土壌管理技術
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成6年度(平成5~9年)
- 研究担当者:上野秀人、山室成一
- 発表論文等:水稲の紙マルチ栽培における土壌中の窒素動態(第1報)、(第2報)、土壌肥料学会講演要旨、1994. 1995.