コメの品質に関与する水溶性糖類の品種間差の化学分析

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要約

白米表層から削りとったコメ粉には、澱粉以外に水溶性糖類も含まれている。主要な糖類は5種で、コメの品質特性との間に密接な関連が見られる。これらは分子量約200万~200の範囲の多糖・少糖・二糖等で、高速液体クロマトグラフで分析できる。

  • 担当:中国農業試験場・地域基盤研究部・品質特性研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 部会名:食品、流通利用
  • 専門:食品品質
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

コメの内部は層状に分かれており、各層からは澱粉のほか、呈味物質のオリゴ糖や遊離アミノ酸なども部位別・層別に著しく偏在して検出されることが知られている。しかし最近、その複雑な分布がコメの品質・食味と密接に関連しているらしいことが解ってきた。たとえば、白米の遊離アミノ酸含量は通例1~20mg/100gの水準にあるが、胚芽にはその10数倍、白米表層には数倍、白米内層には数分の一が含まれており、一部は「味覚のいき値」に到達することによって呈味性に寄与している。
炭水化物類では、不溶性の澱粉類(アミ口ペクチン、アミロース)のほか、冷水によく溶ける一連の多糖類も見つかっており、品種や層別にもよるが合計含量は10~30数%にのぼる。白米表層のものは、加水により数十分~十数時間で酵素分解され、主にマルトース類に変化して甘味を示す。これはイネ種子の側からみれば発芽の初期生理反応の開始を意味するが、その反応系の中には、いわゆる品質・食味に関連の深い物質群も含まれていると考えられるので、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で分析することをねらいとした。

成果の内容・特徴

  • 白米の表層から削りとったコメ粉には不溶性の澱粉以外に、一連の水溶性糖類が含まれていた。主要な糖類は5種あり、コメの品質特性との間に密接な関連が見られた。
  • これらは分子量約200万~200の範囲の複合糖質類・水溶性多糖・オリゴ糖・二糖・単糖などで、HPLCによる高速ゲル濾過法で一挙に定性・定量分析できる。
  • ピークWは複合糖質系でモチに極めて多い。Aは水溶性多糖で、ヨード呈色度が小さくて粘りの強いコメほど多い。Bは複合糖質混合物で多彩な味を呈する。Cはマルトオリゴ糖の3‐7重合体で上質の甘味を有す。Dは二糖・単糖で甘味の強いコメに多い。

成果の活用面・留意点

本法を活用の際は、本葉記載事項(試料調製法、分析条件、使用機種)に留意のこと。また、実験過程でガラス容器・ガラス試験管・金属製品等を使用してNa,K,Mg,Ca等の溶出・吸着を生じた場合には、結果が著しく損なわれることもあり得る。

具体的データ

図1 コメの水溶性糖類の品種別・層別の高速ゲル濾過分析図

その他

  • 研究課題名:米の食味関連成分の部位別・層別分布特性
  • 予算区分 :総合的開発(新形質米)
  • 研究期間 :平成6年度(平成4~6年)
  • 研究担当者:掘野俊郎、三枝貴代、小野田明彦、森 隆(現・食総研)
  • 発表論文等:米粒の研削粉から抽出される水溶牲糖類の高速ゲルろ過分析、日作紀、第62巻別2号:55-56、1993.
                      白米の表層粉に含まれる水溶性呈味成分、日作紀、第63巻別2号:281-282、1994.