アミロースフリー裸麦「四国裸97号」
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要約
四国裸97号はアジ化ナトリウムにより誘発された人為突然変異系統で、アミロースフリーの二条・並性・モチ性裸麦である。主な特徴は、短・強稈、長穂で穂数が多く、収量性は中程度で精麦白度が高い。縞萎縮病とうどんこ病に強い。
- 担当:四国農業試験場・作物開発部・畑作物育種研究室
- 連絡先:0877-62-0800
- 部会名:水田・畑作
- 専門:育種
- 対象:麦類
- 分類:研究
背景・ねらい
裸麦は近年の急激な作付け面積の減少によって生産量が激減し、水田裏作麦を中心とする裸麦には増産による安定供給が強く求められている。その中で、モチ性大麦の利用は現在では麺類、和菓子等に限られているが、ウルチ性品種と同様に味噌用や主食用への用途拡大も検討されており、在来品種等に代わる優良品種の育成とともに、新しい用途開拓のためにも画期的な新品種の開発を急ぐ必要がある。人為突然変異系統の四国裸97号はアミロースを全く含まないモチ性裸麦であり、新用途の開発が期待される。
成果の内容・特徴
- 四国裸97号は、四国裸84号の催芽種子にアジ化ナトリウムを処理し、M3種子でモチ性粒を選抜した後代のアミロースフリーの人為突然変異系統である。
- 四国裸97号はイチバンボシより成熟期がやや遅い。短稈、長・疎穂の穂数型で、中折れ耐性が優れる。耐穂発芽性はイチバンボシよりやや劣る「やや難」で、播性は「I」の春播型である(表1)。
- 子実収量はイチバンボシより少なく、原品種の四国裸84号と同程度である。二条種のため大粒で千粒重が大きく、粒質は粉状質で精麦白度が高い。アミロース含有率は従来のモチ性裸麦が2~10%のアミロースを含むのに対し、四国裸97号は0%の完全なモチ性裸麦である。縞萎縮病とうどんこ病に強い(表2)。
- モチ性裸麦品種のアミログラフ特性として、アミロース含有率が低くなるほど最高粘度に到達する温度が低くなる傾向があり、アミロースフリーの四国裸97号はアミロースを含む他のモチ性品種とは明らかに異なる糊化特性を示す(図1)。
成果の活用面・留意点
- 完全なモチ性裸麦として麺類や和菓子等の業界における用途開発。
- 播性「I」の春播型で出穂が不揃いになりやすいので早播きは避ける。
- イチバンボシ等の既存品種よりやや穂発芽しやすいので適期収穫を行う。
具体的データ



その他
- 研究課題名:裸麦のアミノ酸組成とアミロース含有率の育種的改善による新品種の育成
- 予算区分:高品質輪作・経常
- 研究期間:平成7年度(平成2~6年)
- 発表論文等:
Artificialinductionandcharacterizationofamylose-freemutantsofbarlsy,BarleyGeneticsNewsletter,24,1994.
オオムギにおけるアミロースフリー変異体の作出、四国農試ニュース、67,1995.