イネ科牧草の初冬追播による暖地低標高地帯の簡易な草地更新法

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要約

寒地型イネ科牧草初冬追播し、翌年の3月中旬にNレベルで、0.6kg/aの追肥、5月下旬に第1回目の利用を行い、その後春と同量を追肥し、第2回目利用まで30日以上の再生期間を設けると、暖地低標高地帯での草地の簡易更新が可能である。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・草地畜産研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:畜産
  • 専門:栽培
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

暖地の低標高地帯の草地では、気象要因の影響が大きく、寒地型牧草地の植生が悪化し易いので、3~5年ごとに草地を簡易に更新する必要がある。そこで、初冬の12月に寒地型イネ科牧草を追播し、翌春に安定的な牧草の定着を図る簡易な更新法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 初冬追播後、5月下旬以降に翌春の1番草を刈取ると、追播草種の草丈・乾物重及び2番草の個体群成長速度が良好となり、安定的な生長が確保し易いので、牧草が消滅したメヒシバ優占草地における植生改善効果が大きい。植生改善効果は、オーチャードグラス(品種ナツミドリ)がトールフェスク(品種ナンリョウ)よりも良い(表1)。
  • 1番草刈取後に、Nレベルで0.6kg/aの施肥をすると、草丈、被度及び乾物重に有利な状況がみられ(表2)、また追播牧草の草種構成割合(図1)も大きく、メヒシバ優占草地における植生改善効果が大きい。
  • オーチャードグラス及びペレニアルライグラスの追播草地では、1番草の利用から2回目の利用までに約30日間の再生期間を設けると、必要最小限の現存量を確保できる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 暖地低標高地帯の草地に、本成果の供試草種を追播する場合、簡易な更新技術の一手法として活用できる。
  • 追播時には、強害雑草が少なく、裸地が見える状態であることが必要。本方法でトールフェスクを用いる場合、利用間隔を長くする。

具体的データ

表1.1番草刈取時におけるトールフェスク、オーチャードグラスの草丈、乾物重及び2番草の個体群生長速度(CGR)

 

表2.1番刈後の施肥量がオーチャードグラスの定着に及ぼす影響 図1.1番刈後の施肥量とオーチャードグラスの構成割合(乾物ベース)

 

表3.1番草収穫後約30日目のトールフェスク、オーチャードグラス及びペレニアルライグラス区の追播草種及び雑草の乾物重

 

その他

  • 研究課題名:暖地傾斜地における放牧採草兼用草地の草生回復技術の確立
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成5~7年)
  • 発表論文等:初冬季播種したオーチャードグラス、トールフェスクの定着に及ぼす翌春の刈取時期の影響、
    日草誌,41巻(別),171~172,1995.