イネの各茎の草姿一葉身長の葉位別変化の型-を制御している「模写生長性」の解明

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要約

分げつの草姿は、基本的にその母茎の草姿を模写して形成される。葉身長の葉位別変化の型で草姿をみると、前出葉を含む分げつの葉数が分げつ発生節より上の母茎部分の葉数に等しい場合、分げつと母茎の各草姿は完全に同型になる。

  • 担当:中国農業試験場・作物開発部・栽培生理研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 部会名:総合農業(作物生産)、近畿中国(作物生産)
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

個体の各茎に着く葉身の大きさは、相似生長理論(1951)に従うとされてきたが、個体内の止葉葉身長が著しく変異するなど、その枠組みに合わない事例が多かった。また、理想稲稲作(1973)では、理想的草姿の計量的な比較解析法が提起されていない。そこで、個々の有効茎を対象として、草姿・草型を精密に計量比較するための理論的基礎を求めた。

成果の内容・特徴

本成果の前提知見:1株1本植えの試験区では主稈総葉数に1葉の変異があり、総葉数が1葉少ない主稈の葉身長の葉位別変化の型(葉身長パターン)は、総葉数が多い方の主稈の、止葉を除いたパターンに同型である。また、後者の止葉葉身は明瞭に短い。なお、後者と前者の各パターンを、それぞれN型(事例:図1の0)、[N-1]型と呼ぶ。

1株1本植え・基肥のみでポット栽培したイネの個体で、以下の規則性が認められた。

  • 前出葉を含む分げつの総葉数が、分げつ発生節より上の母茎部分(相関母茎と略称)の葉数に等しい場合、分げつの葉身長パターンは相関母茎のそれの模写になる(図2)。
    この場合、双方の葉身長パターンがともに[N-1]型になる頻度が高い(表1)。
  • 分げつの総葉数が相関母茎の葉数より1葉少ない場合、一般に相関母茎の莱身長パターンは[N-1]型となり、分げつのそれは止葉葉身が相対的に長い[N-2]型(事例:図1の7分げつ)になる(表1)。
  • 相似生長理論では、図2の横並びの葉身が互いに同型になるとみるが、この原則は上記の事実関係に対して規則的なずれをもっていた。
  • 前述した前提知見と上記1、2の規則性とを総合して、1株1本植えの栽培試験区では、主稈・分げつの各葉身長パターンが、基本的に[N-1]型を主とし、N型と[N-2]型とを加えた3型に分れるという形態形成上の性質を新たに「模写生長性」とした。

成果の活用面・留意点

上記比較解析法の確立に用いる。模写生長性は、1株3本植えの試験区でも基本的こ成立していた。節間長パターンは、三つの葉身長パターンに対応した特有のパターンとなる。

具体的データ

図1.主稈と1次分げつの葉身長・葉鞘長パターン 図2.「模写生長」で形成された葉群の構造的規則性(模式図)

 

表1.母茎・分げつの各葉身長パターンの組合せの試験区別出現頻度。

 

その他

  • 研究課題名:水稲の生長・発育過程の解明と生育制御技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成元~8年)
  • 研究担当者:松葉捷也
  • 発表論文等:イネの茎葉生育の規則性に関する発育形態学的研究、日作紀63(2)、1994.