食用茸のふすま培養物施用によるダイズ白絹病の防除

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要約

シイタケ菌、ヒラタケ菌のふすま培養物を圃場施用することにより、土壌中のトリコデルマ属菌の密度が高まり、ダイズ白絹病の発生を顕著に軽減する。

  • 担当:中国農業試験場・生産環境部・発病機構研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 部会名:生産環境(病害虫)
  • 専門:作物病害
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ダイズ白絹病は西南暖地の転換畑大豆作で常発し、大豆の安定生産の阻害要因の一つとなっている。培養した白絹病菌を連年投入した試験圃場では、本病の発生が次第に低下することがしばしば観察され、そのような圃場では白絹病菌に桔抗性を示すトリコデルマ属菌の密度が高まっていることが認められる。そこで、白絹病菌と同じ担子菌類の食用菌の培養物を施用し、土壌中の括抗性トリコデルマ属菌の活性を高めることによる本病防除の可能性を検討する。

成果の内容・特徴

  • シイタケ菌およびヒラタケ菌のふすま培養物を播種後25日、40日の大豆の株元に1ないし2回、30kg/10a量施用し、その後白絹病菌を接種して培土を行い発病を促進させた。
  • シイタケ菌、ヒラタケ菌培養物を圃場に施用することにより、ダイズ白絹病の発生は無処理区に比べて有意に減少し、シイタケ菌の1回および2回、ヒラタケ菌の2回施用ではトリコデルマ菌TH-2菌のふすま培養物施用とほぼ同等の高い防除効果が得られる(図1)。
    これら食用茸の培養物は大豆には病原性を示さず、また、生育への悪影響はない。
  • シイタケ菌およびヒラタケ菌の培養物施用区ではトリコデルマ属菌の顕著な増加が認められる。その菌種は Trichoderma harzianum が主体であった(表1)。
  • この結果、シイタケ菌、ヒラタケ菌の施用は、土壌中におけるダイズ白絹病菌に桔抗性を示すトリコデルマ属菌の活性を高め、白絹病の抑制につながるものと考えられる。

成果の活用面・留意点

トリコデルマ菌はシイタケなど食用茸栽培にとっては有害であるため、食用茸の栽培場の近くでは施用しないこと。

食用茸の培養床(おがくず培地)は一部は再利用されるが、殆ど廃棄されており、本知見は廃培地の有効利用を図る上で有益である。

具体的データ

図1.食用茸のふすま培養物施用によるダイズ白絹病の防除効果

 

表1.土壌中の糸状菌密度の変動とトリコデルマ属菌の菌種別分離頻度

 

その他

  • 研究課題名:桔抗微生物によるダイズ白絹病抑制機構の解明とその利用による防除
  • 予算区分:一般別枠(安全性向上)
  • 研究期間:平成7年度(平成3~7年度)
  • 研究担当者:仲川晃生(現・長崎総農林試)・山本孝し