イネ苗の立枯性病害に対して発病抑制能を示すPseudomonas属細菌
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要約
中国農試産水稲の籾及び葉鞘から単離した細菌の中から、イネもみ枯細菌病、苗腐敗症、イネ苗立枯細菌病に対し強い発病抑制能を示すPseudomonas属の4菌株が得られた。そのうちの1株は、イネばか苗病に対しても強い発病抑制力を持つ。
- 担当:中国農業試験場・生産環境部・病害研究室
- 連絡先:0849-23-4100
- 部会名:生産環境(病害虫)
- 専門:作物病害
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
イネもみ枯細菌病による苗腐敗症の発生生態に関する一連の研究から、水稲の籾および葉鞘に本症の発生を抑制する微生物が生息していることが強く推論された。この推論を実証し、発病抑制の主役を担う微生物を特定するとともに、その機能を活用して本症をはじめ育苗期の立枯性病害を防ぐ生物的制御法の確立を目指す。
成果の内容・特徴
- 平成3~5年、中国農試産水稲の籾及び葉鞘から分離した細菌700株の懸濁液(108個/ml濃度)に、105個/ml濃度の病原を混合して種籾を浸漬し、播種生育後における苗腐敗症の発生程度を調査した。その結果、90%以上の高い発病抑制率を示す細菌が4株(A~D)見出された。
- 上記4菌株の分類学的所属を精査した結果、A・B・Cの3菌株はPseudomonasgladioli、D菌株は新規のPseudomonas属細菌であることが明らかになった。
- 浸種液に108個/mlの濃度で添加した4菌株は、自然感染籾由来のイネもみ枯細菌病苗腐敗症に対しても強い抑制効果を示す(表1)。
- 1と同様の検定条件で、A~Dの菌株はイネ苗立枯細菌病に対しても安定した高い発病抑制能が見出される(表2)。
- イネばか苗病の自然感染籾を、上記3と同様の条件で処理したところ、菌株間に差異があるものの発病抑制効果が認められる。とくに、D菌株は98%以上の発病抑制率を示す(表3)。
- これら4菌株の添加によるイネの生育への影響は認められない。
成果の活用面・留意点
- 上記4細菌株が実用化に供しうるかどうかについては、今後さらに検討が必要である。ただし、本研究により難防除病害の生物防除の可能性が示唆された。
- 上記菌株のうちB~D3菌株についでは現在特許申請中である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:イネもみ枯細菌病菌に対する葉上微生物の拮抗機構の解明とその制御
- 予算区分:生態秩序(大型別枠)
- 研究期間:平成7年度(平成元~10年)
- 研究担当者:角田佳則、高屋茂雄
- 発表論文等:新規微生物株を用いたイネ苗の立枯性病害防除剤及び防除方法、中国農業試験場、特許出願第281000~281001号、平成7年10月27日