温州みかんの生果仕向量の変動が総収入に及ぼす影響

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要約

加工原料用果実価格安定対策事業による果汁加工仕向不足払いを考慮した温州みかん総収入決定モデルを構築した。モデル分析の結果によれば、現行の生果仕向量の一部を果汁加工に仕向けた場合、総収入は加速度的に増大する。

  • 担当:中国農業試験場・地域基盤研究部・情報処理研究室
  • 連絡先:0849‐23‐4100
  • 部会名:総合農業(経営)、近畿中国(営農)
  • 専門:経営
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

オレンジ・オレンジ果汁輸入自由化は、温州みかん需要量を減少させ、また、国内果汁加工事業の存続を脅かしている。これまで果汁加工仕向を中心に生果の出荷調整を行ってきた温州みかん産地では、現在、出荷調整そのもののあり方が問われている。そこで、果汁加工仕向による出荷調整の効果を数量的に把握するため、加工原料用果実価格安定対策事業による果汁加工仕向不足払い制度を考慮した温州みかん総収入決定モデルを構築し、現行の生果仕向量の一部を果汁加工に仕向けた場合、総収入に及ぼす影響を解明する。

成果の内容・特徴

  • 温州みかん総収入決定モデルを構築するためには、生果・果汁加工各仕向について、価格の変化に対する需要量の変化を解明する必要がある。そこで、温州みかん産業全体を対象とした生果・果汁加工各仕向の需要関数を推計した(表1)。推計においては、各仕向の価格の変化が需要量に与える直接的効果の計測を目的とし、競合・代替関係にある他品目の価格の変化が需要量に与える間接的効果はここでは明示的に扱わない。推計結果によると、生果仕向需要・果汁加工仕向需要ともに、価格に対する反応は非弾力的である。
  • 生果仕向量の削減が総収入(生果仕向売上高+果汁加工仕向売上高+果汁加工仕向交付金)に及ぼす影響の温州みかん産業全体を対象としたシミュレーション結果を表2に示す。現状の生果仕向量の5%、10%、20%を果汁加工に仕向けた場合、総収入はそれぞれ10%、22%、52%増加する。つまり、総収入は加速度的に増加する。ちなみに、生果仕向量を5%、10%、20%削減した場合、生果仕向価格は16%、36%、91%上昇し、価格の上昇率が仕向量の削減率を上回る結果、生果仕向売上高は増加する。
    現状の生果仕向量の5%、10%、20%を果汁加工に仕向けた場合、総収入に占める生果仕向売上高の割合はそれぞれ95%、96%、97%と段階的に増加する。つまり、総収入の増大はそのほとんどが生果仕向売上高の増大によりもたらされたものである。

成果の活用面・留意点

今後の温州みかんの生果仕向量・果汁加工仕向量を決定するための基礎資料となる。

具体的データ

表1.需要関数式および計測結果

 

表2.総収入決定誘導式によるシミュレーション結果

 

その他

  • 研究課題名:温州みかんの果汁加工仕向による生果の出荷調整が産地に及ぼす影響の解明
  • 算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成5~7年度)
  • 研究担当者:松下秀介
  • 発表論文等:なし