肥育牛へのビタミンE投与による展示中の牛肉品質の安定化
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要約
肥育牛への屠殺前4週間あるいは1週間のビタミンE投与により各組織のビタミンE濃度が増加し、展示中の牛肉のメトミオグロビン形成が減少して良好な肉色が維持され、脂質の酸化が抑制される。
- 担当:中国農業試験場・畜産部・産肉利用研究室、広島県立畜産技術センター・飼養技術部、協和発酵工業株式会社・研究開発本部
- 連絡先:08548-2-0144、08247-4-0331、03-3282-0047
- 部会名:畜産
- 専門:食品品質・加工利用
- 対象:肉用牛
- 分類:普及
背景・ねらい
牛肉は鮮紅色から茶色に変色すると消費者の購買意欲が低下するので、メトミオグロビンの形成と脂質の酸化は牛肉の安定化にとって重要な問題である。そこで、抗酸化作用を有するビタミンEを屠殺前4週間あるいは1週間肥育牛に投与して、均一な理化学的性状を示す半腱様筋および経済的価値の高い大腰筋と胸最長筋を用いて、通常の食肉販売店の展示条件を模して蛍光灯下4°Cで展示し、牛肉の肉色と脂質の安定化に及ぼす効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 4週間のビタミンE投与(2,500mgd1-α-トコフェロール/頭/日)により血漿および肝臓、腎臓脂肪、半腱様筋のビタミンE濃度が増加する。ビタミンE投与は対照に比べ、メトミオグロビンの形成を遅らせて(図1A)、良好な肉色を維持し、脂質の酸化度を示す2-チオバルビツール酸反応物質(TBARS)値を抑制する(図2A)。
- 1週間のビタミンE投与(5,000mgd1-α-トコフェロール/頭/日)により血漿および肝臓、大腰筋、胸最長筋のビタミンE濃度が増加する。1週間のビタミンE投与でも牛肉品質を保持する効果が認められる(図1B、図2B)。
- これらの作用機構として投与されたビタミンEは細胞膜に取り込まれ、このビタミンEが直接的に膜の脂質の酸化を防止するとともに、間接的に細胞質中のミオグロビンの酸化を抑制すると考えられる。
成果の活用面・留意点
- ビタミンEは他の脂溶性ビタミンのAやDに比べ排泄され易く、肥育牛にビタミンEを投与しても過剰症が出にくいという特徴がある。
- 現在、生肉への添加物の使用は法律で禁止されている。肥育牛にビタミンEを投与し、各組織に蓄積させて牛肉の品質保持を図ることが、効果的な方法である。
- 本成果とこれまでの成果(三津本ら.J.FoodSci.56:1489-1492.1991)から、約1,500mgの酢酸d1-α-トコフェロールを2~3か月間毎日肥育牛に投与することにより、より確実に牛肉品質が安定化すると思われる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:高品質牛肉生産のための高度出荷管理技術の開発
- 予算区分:官民共同
- 研究期間:平成7年度(平成4~6年)
- 研究担当者:三津本充、小沢忍、三橋忠由、河野幸雄、原田武典、藤田浩三、小出和之
- 論文発表等:
1)黒毛和種去勢牛への屠殺前4週間のビタミンE投与による展示中の牛肉色と脂質の安定化、日畜会報、66(11)、P962-968、1995.
2)ビタミンEの1週間投与が貯蔵中の牛肉品質に及ぼす影響、第88回日本畜産学会大会講演要旨、P99、1994.