近畿中国地域におけるシバ等野草地の畜産的利用の実態

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要約

近畿中国地域におけるシバ等野草地の畜産的利用は、島根・岡山両県を中心に、76市町村・193箇所で認められる。そして近年の畜産的利用の減少に対しては、主に管理労力不足などが影響しており、現存する野草地も同様の問題を抱えている。

  • 担当:中国農業試験場・企画連絡室・総合研究第2チーム
  • 連絡先:08548-2-0144
  • 部会名:近畿中国(畜産)
  • 専門:資源利用、経営
  • 対象:野草類
  • 分類:行政

背景・ねらい

土地資源の有効利用と低コスト肉用牛生産を図るためには、低投入で持続的な放牧利用が可能な、シバをはじめとする野草地を積極的に活用するための方策を探っていくことが必要である。そこで、近畿中国地域の市町村を対象にアンケート調査を実施し、当該地域における野草地の畜産的利用の最新の実態、並びに利用減少を巡る流れを把握する。

成果の内容・特徴

  • 近畿中国地域におけるシバ等野草地の畜産的利用は、島根・岡山両県を中心に、76市町村(20%)の193箇所で認められる。中国地域に限定すると、利用している市町村の割合(31%)は、1980~’81年調査と比べて4ポイントの低下に過ぎないが、野草地の箇所数は激減している。なお、かつて野草地を利用していたのは80市町村(21%)である(表1、図1)。
  • 現在も利用されている野草地は、牧野組合や農協が管理する比較的大規模な「大牧場(おおまきば)」と、個別農家が管理する小規模な「小牧場(こまきば)」とに大別される。前者では、植生はシバ等の野草優占、利用形態は放牧のものが多く、後者では、植生は、野草優占または牧草との混在、利用形態は放牧または採草のものが多い。
  • 過去には、主として牧野組合等が管理する野草地が、放牧利用及び有畜農家の減少、これに伴う管理労力不足により、雑木林地化や植林地化が進んでいる。一方、近年は、主として個別農家や牧野組合が管理する野草地が、管理労力不足ほかの理由により、雑木林地化が進むとともに牧草地化または農業以外の利用へと転換している(図2)。
  • 現在も利用されている野草地における問題点としては、野草地管理技術や放牧病への対策技術の必要性や、そのための経費負担等が指摘されている。ただし、近年利用が中止された野草地と同様に、共同管理体制の弱まりに起因する、牧柵整備や刈払い等のための管理労力の不足の問題を抱えており、畜産的利用の継続が困難な野草地が少なくない。

成果の活用面・留意点

野草地についてのデータが整備されていないなかで、今後の野草地の利用促進を図る上での近畿地域をも含めた最新の情報として活用できる。

具体的データ

表1.野草地の利用状況

 

図1.野草地の利用状況(市町村別区分図)

 

図2.野草地の畜産的利用の減少を巡る主な流れ

 

その他

  • 研究課薙名:中山間地域におけるシバ型草地の畜産的利用の実態解析
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成7年度(平成6~7年)
  • 研究担当者:山本直之、圓通茂喜、大谷一郎
  • 発表論文等:
    近畿中国地域におけるシバ等野草地の畜産的利用の実態調査、
    中国農業試験場研究資料第25号(1995)ほか