養液栽培におけるホウレンソウのシュウ酸、硝酸含量の低減化

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要約

養液栽培において、ホウレンソウのシュウ酸、硝酸含量は、培養液の硝酸態窒素とアンモニア態窒素の比率により変動する。栽培前半を硝酸態窒素で、後半をアンモニア態窒素で栽培することにより低シュウ酸、低硝酸含量の生産物が得られる。

  • 担当: 中国農業試験場・畑地利用部・畑土壌管理研究室
  • 連絡先:0773-42-0109
  • 部会名:総合研究、生産環境(土壌肥料)
  • 専門:肥料
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ホウレンソウの養液栽培においては、生産物の高品質化に期待が大きい。そこで、培養液の組成がホウレンソウの低品質関連成分であるシュウ酸、硝酸含量に及ぼす影響を解明し、高品質安定生産技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 培養液の窒素濃度(硝酸態窒素)が濃くなるに伴って、ホウレンソウ(品種:グロ-リ-)の硝酸含量は増加する。シュウ酸含量は培養液の窒素濃度が1me/Lの低濃度条件下では低い。しかし、4me/L以上では窒素濃度による変動は僅かである(図1)。
  • 培養液の硝酸態窒素とアンモニア態窒素の比率では、アンモニア態窒素の比率が高くなるほど生育は劣る。一方、ホウレンソウのシュウ酸、硝酸含量は低下する傾向にある(図2)。
  • 栽培前半を硝酸態窒素(12me/L)で栽培し、収穫1週間前にアンモニア態窒素(12me/L)に取り替えることによりホウレンソウ生育はやや遅延するものの、全シュウ酸含量は61%、硝酸含量は90%低下する(表1)。

以上、培養液の窒素濃度の調節によりホウレンソウのシュウ酸含量を低下させることは困難と判断される。一方、培養液の窒素の形態によってシュウ酸、硝酸 含量は変動することが明らかとなり、硝酸態窒素とアンモニア態窒素の施用を調節することによりシュウ酸、硝酸含量の低いホウレンソウ栽培が可能である。

成果の活用面・留意点

本試験は、湛液型の水耕装置で4月と6月に実施した。7~8月の高温期での検討が必要である。

具体的データ

図1 培養液の窒素濃度とホウレンソウの生育及び葉中のシュウ酸、硝酸含量

図2 培養液の硝酸態窒素とアンモニア態窒素とホウレンソウの生育及び葉中のシュウ酸、硝酸含量

表1 培養液窒素の形態変更とホウレンソウの生育および葉中のシュウ酸、硝酸含量

その他

  • 研究課題名:培養液管理による品質構成成分の調節
  • 予算区分 :地域総合
  • 研究期間 :平成8年度(平成7年~11年)
  • 研究担当者:塩見文武、堀 兼明、浦島泰文
  • 発表論文等:養液栽培における窒素の濃度及び形態がホウレンソウの硝酸、
                      シュウ酸含有量に及ぼす影響、日土肥学会関西講要、91回、1995.
                      湛液型水耕栽培における窒素の濃度及び形態がホウレンソウの硝酸、
                      シュウ酸含有量に及ぼす影響、近畿中国農研、92号、1996.