四国山間地域における広葉樹林活用システム形成の効果とその条件
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要約
四国山間地域における広葉樹林活用の地域内システムの形成は、雇用創出効果、所得増加効果をもたらしている。これを可能とする条件は、原料確保から販売までの一貫体制の確立、第3セクター、町、森林組合、農協、民間企業のシステム内への取り込み、及び農家への経営支援・技術指導等のソフト対策の確立である。
- 担当:四国農業試験場・総合研究部・農業経営研究室
- 連絡先:0877-62-0800
- 部会名:営農
- 専門:経営
- 対象:
- 分類:行政
背景・ねらい
高齢化の進行
及び耕作放棄地の増大が深刻化する四国山間地域においては、いかに担い手を確保し、地域維持を図っていくかが重要な課題となっている。このような四国山間
地域の中で、広葉樹林を活用する地域内システムの形成によって問題の解決を図ろうとする試みがみられる。そこで、このようなシステムの実態と、地域にもた
らす効果、及びそれを可能とする条件を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 徳島県山間農業地域に属するK町において、広葉樹林を活用した菌床シイタケ生産、及び「彩(いろどり)」生産(図1の注参照)が、第3セクターを中心とした地域内システムとして展開している(図1)。
- 広葉樹林活用システムの機能と特質は、第1に、菌床シイタケ生産農家に対する町によるハウスリースや町営住宅の建設、民間企業による技術員派遣やマニュアル作成などを通じた技術的・経営的な支援であり、第2に、「彩」生産農家に対する農協による市況情報の提供、及びマーケティング活動を通じた
販路確保である。
- 広葉樹林活用システムの形成による効果は、以下のとおりである。
第1に、システムの中核である第3セクターの黒字運営が実現された。
第2に、町内全人口の2.8%に相当する合計48人の新たな就業機会の創出、農家の周年就業が実現された。さらに、新規就農者の家族を含めると27人が町内へ流入したこととなり、人口減少率緩和に貢献した(表1)。
第3に、菌床シイタケ及び「彩」の販売額の伸びは著しく、農家所得の増大をもたらした(表2)。
- 以上のような効果を生み出す条件は、次のように整理される。
第1に、原料の育成・確保から始まり、加工、生産、販売に至る全過程が地域内システムの中に組み込まれている。
第2に、システム構成要素として、第3セクター、町、森林組合、農協、民間企業をシステム内に取り込み、システム設計、合意形成、財政支援の面で町が主導的役割を果たしている。
第3に、システム内においては、原料や製品の取引関係だけでなく、農家への経営支援、及び農家や加工場への技術指導といったソフト対策が重点的に講じられている。
成果の活用面・留意点
- 以上の広葉樹林活用システムは、耕地条件が劣悪かつ農外就業機会に恵まれない山間地域において、特に有効、かつ実現可能なものである。
具体的データ



その他
- 研究課題名:広葉樹林を活用した周年就業機会の確立
- 予算区分:一般別枠(中山間活性)
- 研究期間:平成8年度(平成6年度~8年度)
- 研究担当者:山田隆一、関野幸二、高橋弘江
- 発表論文等:なし