傾斜地果樹園用の小型堆肥側方散布装置

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要約

開発した堆肥散布装置は、歩行形運搬車に搭載して、傾斜地果樹園に設置した幅1m程度の園内作業道を走行しながら堆肥側方散布できる。本装置は、完熟堆肥だけではなく未熟堆肥も、粉砕しながら機体側方に1.5~4m幅で帯状に散布できる。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・機械施設研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:果樹類
  • 分類:指導

背景・ねらい

カンキツをは じめとした果樹作において、土壌物理・化学性の適正化、樹勢の回復等を目的とした土づくりが推進されているが、傾斜地への堆肥等の有機物資材の投入は多労 を要し、必要とされなからもあまり行われていないのが現状である。また、従来の堆肥散布機は積載した堆肥を機体後方へ散布するため、これまで四国農試で開 発を進めてきた幅1m程度の園内作業道に適合した小型機械化体系で要求される、道路側方の樹体根元への散布は困難である。そこで、歩行型運搬車に搭載して 園内作業道を走行しなから堆肥を側方散布できる小型堆肥側方散布装置を開発した。

成果の内容・特徴

  • 開発機は、荷台寸法1150×950mm、積載量500kgの歩行型運搬車に搭載でき、積載した堆肥をベルトコンベアで一定量ずつ機体前方に送り、横送りロータて粉砕・横移動させ、散布ロータで機体側方に散布する(図1、表1)。
  • 横送りロータは、なた爪の屈曲部の向きを一方向にそろえ、前方全面を半円筒形の鋼板て覆っている。これにより、堆肥は切削と同時に斜め側方に 投てきされ、一連の爪が擬似的にらせん連動を行うことで横送りされる。散布ロータは、横送りロータの未端で4枚の羽根が直交して回転することで、堆肥を機 体側方に散布する。散布ロータには、堆肥の前方への飛散を防ぐ円板と、散布到達距離を調節する飛散調節板を設けている。
  • 開発機は、1回の積載て約2分の散布ができ、走行速度が0.3m/s程度であれば散布可能走行距離は40mである。また、腐熟度がやや悪い、高水分の牛ふん・おがくず堆肥でも散布できる。一例として、積載量256kg(堆肥密度705kg/m3、含水比311%)のとき、毎分散布量が112kg、最大散布到達距離(90%以上の堆肥が散布される水平距離)は4mであった。
  • 散布ロータ出口に飛散調節板を取り付けることにより、散布到達距離を1.5~4mの範囲で任意に変えることが可能であり(図2)、傾斜地果樹園において園内作業道から樹体までの距離に対応した堆肥散布ができる。

成果の活用面・留意点

  • 本装置を搭載する運搬車は、全幅が1m程度、最大積載量か500kg以上で、荷台がリフトするものが適している。
  • 本装置で散布できる堆肥は、マニュアスプレッダで通常散布している水分範囲の堆肥とする。傾斜地果樹園での散布は、幅1m以上の園内作業道を敷設した園地に適用し、谷側一方向散布(図3)で行うのが望ましい。

具体的データ

図1 小型堆肥側方散布装置の概略図

表1 開発機の主要諸元

図2 飛散調節板角度別の横方向散布量累積割合

図3 傾斜地果樹園における堆肥散布作業

その他

  • 研究課題名:傾斜地カンキヅ作の快適省力化のための小型機械化技術体系の実証
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成8年度(平成5~9年)
  • 研究担当者:長崎裕司、猪之奥康治、官崎昌宏、田中宏明高辻豊二、山本博(総合研究部、総合研究第1チーム)
  • 発表論文等:平成8年度四国地域農林水産業研究成果発表会講演発表、1996年11月。
                      実用新案(堆肥散布機)登録番号第3030632号。