RLGS法の改良と画像解析によるイネ品種間の遺伝的多型分析
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要約
RLGS法を改良し画像解析装置と組み合わせた解析法を確立し、それによって遺伝的に近縁な日本のイネ品種間でDNAレベルでの遺伝的多型を効率的に検出することができる。
- 担当:四国農業試験場・作物開発部・育種工学研究室
- 連絡先:0887-62-0800
- 部会名:生物工学
- 専門:バイテク
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
特定の品種の
間で多数の多型的なDNAマーカーを得ることが個々の形質の遺伝分析や遺伝的多様性の把握において重要である。しかし、日本のイネ品種のように遺伝的近縁
性の高い品種間でDNAレベルでの遺伝的多型を多くの遺伝子座について検出するためには、RLGSやPCRを用いた分析法では同じ実験操作を繰り返し行っ
てスクリーニングする必要があり、効率的でない。そこで、多型検出能力を向上させるため、新しいDNAフィンガープリントとしての可能性をすでに確認した
RLGS(ゲノム・スキャニング)法の実験手順を簡便化し、画像解析装置と組み合わせる。
成果の内容・特徴
- RLGS改良法(浅川1996)をイネDNAの解析のために改変し、得られたRLGSプロファイルを画像解析装置で解析する。イネDNA250ngをNot I、EcoRVで同時に消化後RIで標識化する。そのうちDNA100ngをアガロース・ゲル電気泳動(1次元目)し、ゲルのままMboIで消化し、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(2次元目)する。ゲルを乾燥後オートラジオグラフィでX線フィルムに感光させる。得られたRLGSプロファイルを面像解析装置(東洋紡、解析ソフトウェアはPDI社PDQUESTver.5.1
PC version)のスキャナーで取り込み、バックグラウンドを除去し、スポットの位置と強度を検出し、特定の品種間で比較する。
- RLGS改良法と画像解析装置を用い、相互に近縁な日本の在来品種(愛國、旭、十石、亀治、亀ノ尾、大場、竹成、神カ)のRLGSプロファイ
ルから約1000個の明瞭なスポットの見られた領域を選び解析する。任意の2品種間の比較では各品種に特異的なスポットの和が平均約166個検出でき、各
品種間の類似度を計算するといずれも0.902から0.928という値が得られる(表1)。
- 同じ領域を兄弟品種であるコシヒカリ、越路早生、ハツニシキ、ホウネンワセ、ヤマセニシキ、ならびにひとめぼれ、ササニシキを調査すると、
RLGSプロファイルはきわめてよく似ているがそれぞれの品種を明瞭に織別できる。その類似度は在来品種間よりも高く、0.936から0.959である(表2)。
成果の活用面・留意点
- イネ以外の作物にも応用可能である。ゲノムサイズに応じて供試DNA量ないしはオートラジオグラフィの時間を調整する必要がある。
- 現段階では電気泳動の解像度による検知限界や機械的なスポットの認識の過程で生じる誤差(誤認識)を完全には排除できないため相互に異なるスポットの数を過大に評価し品種の類似度を過小に評価している可能性は残る。
具体的データ


その他
- 研究課題名:イネ品種同定のための効率的検定法と分子マーカーの開発
- 予算区分:イネ・ゲノム
- 研究期間:平成8年度(平成6~9年度)
- 研究担当者:河瀬眞琴・石原次郎・富岡啓介
- 論文発表など:RLGSプロファイルの面像解析による日本のイネ品種の多型分析
育種学雑誌47(別冊1)P.140