乾燥法によるカンショ胚様体の凍結保存
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要約
アブシジン酸(ABA)添加培地で誘導した「高系14号」の胚様体を相対湿度60%で約2週間乾燥すると、液体窒素中で凍結保存できる。保存した胚様体は発芽し、植物体に成長する。
- 担当:九州農業試験場・畑作利用部・甘しょ育種研究室
- 連絡先:0986-22-1506
- 部会名:作物生産、畑作
- 専門:育種
- 対象:いも類
- 分類:研究
背景・ねらい
現在実用化されている茎頂培養によるカンショのウイルスフリー苗生産にかわる技術として、胚様体を利用したより効率的な種苗生産システムを開発するには、
胚様体の超低温下での保存技術が必要である。凍結保存に先立つ前処理として、乾燥法は特別な装置を必要としない簡便な手法であるが、これをカンショ胚様体
に適用し、凍結保存を試みた。
成果の内容・特徴
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オーキシン(1mg/l 2,4-D及びNAA)を含む培地で茎頂から作出したカルスをアブシジン酸添加改変MS培地で培養して得た胚様体は、摂氏15度または摂氏27度、相対湿
度60%で約2週間乾燥すると、水分含量は約9%になり、摂氏-196度の液体窒素中で凍結保存が可能になる(写真2)。
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保存した胚様体の約30~40%はホルモンフリーMS培地で発芽し、植物体に成長する(表1及び写真1)。
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乾燥温度は摂氏15度の方が、摂氏27度に比べて発芽率が約4%ほど高い(表1)。
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サイズの大きい胚は、凍結保存後の発芽率が高い(表2)。
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凍結保存により、胚様体由来の植物体で葉形、いもの形状や結藷性など形態的な異常が増えることはない(表3)。
成果の活用面・留意点
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カンショ胚様体を凍結保存する場合に前処理として乾燥法が適用できる。
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胚様体からの再生植物体には形態的な異常が認められる場合があるので注意する。
具体的データ

表1 乾燥凍結処理後の胚の生育(平成5年)

表2 胚の大きさと乾燥凍結処理後の胚の生育

表3 胚様体でみられた異常個体の比率

写真1 乾燥・凍結処理した胚の発芽(品種名:高系14号)

写真2 乾燥処理前後の胚様体の様子(上段:乾燥前、下段:乾燥後)
その他
- 研究課題名:凍結によるカンショ胚様体等の長期保存技術の開発
- 予算区分 :地域バイテク、経常
- 研究期間 :平成8年度(平成3~8年)