ワラビ優占草地および広葉樹林地へのシバ導入法

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要約

ワラビ優占草地をシバ草地化するには、除草剤散布やシバ移植1年目の頻繁 な刈払いによりワラビを抑圧し、広葉樹林地にシバを導入するには、強間伐後にシバ を移植し、両草地ともシバ移植当年からのべ200頭・日/ha程度の放牧を行う。

  • 担当:中国農業試験場・総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:08548-2-0144
  • 部会名:永年草地・放牧
  • 専門:生態
  • 対象:野草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

中国地方では、ワラビが優占している草地や未利用の林地が多く存在する。ワラビは肉用牛には有毒であり、通常は採食されないので、ワラビを防除してシバ草地化することで牧養力が高まる。一方、林地での放牧利用を図るためには、林床植生を、施肥が不要で土地保全にも役立つシバ植生に転換し、牧養力を高めることが望まれる。そこで、ワラビ優占草地および広葉樹林地の林床にシバを導入し、放牧条件下、(表1)でシバの被度を高める方法について検討する。

成果の内容・特徴

  • ワラビが優占する野草地で、1995年5月に除草剤を散布し(アシュラム液剤、555、370ml/10a)、ワラビ枯死後の6月にシバのポット苗を4本/m2移植して管理放牧すると、ワラビの再生も少なく、シバは急速に広がり、移植の約2年後にはシバが優占する(表2)。
  • 管理放牧すると、ワラビがしだいに減少、わい性化し、除草剤散布処理と同様に約2年後にシバが優占する。一方、無処理では移植したシバの大部分が消滅する(表2)。
  • コナラ、エゴノキ、ヤマザクラ等の広葉樹林(平均樹高約9m)に立木密度の異なる3処理区を設け、1996年3月に林床にシバの苗(15×15cm)を1枚/m2移植し、放牧した。林床の光環境は、立木密度が少なくなるほど改善され、下草量が増加する(表3)。
  • 林床のシバの被度は、移植翌年には立木密度が低い処理区ほど高まり、低密度区では優占種となることから、本試験程度の樹高の広葉樹林地では、概ね30本/10a程度に強間伐し、相対光量子束密度を林外の80%程度にするとシバの定着が可能になる(表4)。

成果の活用面・留意点

  • 中国地域のワラビ優占草地および未利用の広葉樹林地に適用できる。
  • 草地管理として有刺植物等の不食草の除去および掃除刈りを年1~2回必要とする。 

具体的データ

表1.放牧のべ頭数

表2.シバを導入したワラビ優占草地のワラビの生育およびシバの被度

表3.立木密度の異なる広葉樹林の林床の光環境および林床の下草量

表4.シバを導入した林床の主要草種の被度の変化

その他

  • 研究課題名:里山、耕作放棄地におけるシバ型植生の導入定着条件の解明と保全的利用技術の確立
  • 予算区分:経 常
  • 研究期間:平成9年度(平成6年~9年)
  • 研究担当者:大谷一郎、山本直之、小山信明、圓通茂喜