和牛繁殖経営におけるシバ型草地を活用した放牧導入の経済性評価
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要約
和牛繁殖経営がシバ型草地を活用して放牧を導入した場合、所得が増加し、
飼料費が節減すると試算されるが、これらは放牧地の養分供給量や子牛生産率等に大
きく左右されるので、適正放牧圧の維持や放牧牛の適切な繁殖管理等が重要となる。
- 担当:中国農業試験場・総合研究部・総合研究第2チーム
- 連絡先:08548-2-0144
- 部会名:永年草地・放牧
- 専門:経営
- 対象:肉用牛
- 分類:研究
背景・ねらい
低投入で持続的なシバ型草地を活用した放牧は、和牛繁殖経営において低コスト・省力化等が期待されており、これらの効果と、放牧地の条件や飼養技術等の変化が及ぼす影響についての定量的な把握が求められている。そこで、和牛繁殖経営のなかで典型的な耕畜複合経営を対象に、放牧導入の経済性について経営全体の枠組みでの試算・評価を行う。
成果の内容・特徴
- 現地の実態をもとに繁殖牛や放牧地等が有効利用できる状態を想定して、繁殖牛10頭規模で「繁殖+稲作+兼業」の和牛繁殖経営における放牧導入の評価モデルを設計し、シバ型草地を活用して放牧を導入した場合の所得への影響について試算する(表1、図1)。
- 放牧を導入しない場合は、飼養可能頭数10頭、農家所得350万円(うち繁殖部門50万円)となる。これに対し、放牧を導入し更に面積拡大を図った場合は、例えば放牧地3haのとき、労働時間の節減により飼養可能頭数は13頭程度に増加するとともに、農家所得は70万円増加し、420万円(うち繁殖部門120万円)となる。同時に、繁殖牛1頭当たり購入飼料費は9.6万円となり、放牧を導入しない場合に比べ約4万円の節減が期待される。
- ただし上述の効果は、放牧地の養分供給量(TDN)や飼養管理技術に大きく左右される。仮に、過放牧等による裸地化に伴い放牧地の養分供給量が初期条件の半分程度に低下した場合、また加えて、子牛生産率が100%(1年1産)から10%低下(1ケ月強の遅れに相当)した場合、放牧地5haのときには、各々48万円、62万円の所得の低下につながる(図2)。
- 以上より、放牧導入により、30万円台という近年の和子牛価格の低迷下においても、繁殖部門が耕畜複合経営における収益部門として期待される。ただし、特に長期的な視点からみれば、シバ型草地を活用する場合、適正放牧圧を維持し裸地化を起こさないこと、また、放牧牛の適切な繁殖管理や栄養状態の観察等が重要であることが改めて確認される。
成果の活用面・留意点
- 放牧地の造成コストや新規投資等を考慮していないこと、また、季節分娩の実施、放牧地の養分供給量が不足する際は補助飼料の給与が前提であることには留意する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:シバ型草原への放牧についての経営的評価
- 予算区分:地域総合
- 研究期間:平成9年度(平成7~9年)
- 研究担当者:山本直之、圓通茂喜、大谷一郎、小山信明
- 発表論文等:放牧導入の経営経済性、高生産性・高品質牛肉生産技術を基幹とする地域複合営農システムの確立、中国農業試験場研究資料、第31号、1998、他。