イネ品種の乾燥土壌中出芽性の検定法の確立と出芽性良品種の選定
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要約
イネ品種の乾燥土壌中出芽性について、水分調整した土壌を用いる簡易な検定法を確立した。この検定法を用いて、乾燥土壌中出芽性良品種としてMoulla Topa 等30品種を選定した。
- 担当:中国農業試験場・作物開発部・栽培生理研究室
- 連絡先:0849-23-4100
- 部会名:作物生産(育種・栽培)
- 専門:生態
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
水稲の乾田直播栽培の出芽・苗立ちを改善し、乾田直播向け品種育成に資するため、乾燥土壌条件での出芽性の検定法を確立する。また、出芽性良品種の選定を行う。
成果の内容・特徴
- 温度、土壌含水比、床土・覆土の厚さ、播種量を検討した結果、適当な検定条件は次の通りであった。灰色低地土を3mm目の篩にかけ風乾後、土壌水分を調整する(表1、水ポテンシャルで-1.0から-1.2MPa、含水比で0.080から0.095)。この土壌を蓋つきプラスティック容器(13.5×13.5×8.8cm)に深さ4cmまで充填する。そこに乾籾(49粒)を播種し鎮圧した後(26g/cm2 程度)、覆土(30mm)して、再び鎮圧する。検定は人工気象器(22°C)で行う。
- 乾燥土壌中出芽性の判定は品種間差のよく表れる播種後12日目の出芽率で行う(図1)。播種後日数がさらに遅くなると、全体の出芽率が上昇して品種間差が小さくなる。土壌水分により出芽率の推移が全体的にずれる場合は最上位の品種の出芽率が60%程度になる日の出芽率で判断する。
- この検定法を用いて、世界各地を収集元とする特性の異なる381品種を検定し、乾燥土壌中出芽性の優れた30品種を選定した(表2)。12日目の出芽率は、バングラデシュより収集したBoro品種群(乾期である11-1月に播種される。低温耐性に優れる。)のMoulla Topaが最も高い。
成果の活用面・留意点
- イネ品種の乾燥土壌中出芽性を検定できる。
- 選定した品種は乾田直播向け品種育成の素材として利用できる。
- 検定にあたっては土壌の種類によって含水比や水ポテンシャルを調整する。
- 休眠の強い品種を採種後すぐに検定する場合は50°C7日間処理で休眠打破する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:乾田直播特性の生理生態学的解明と検定法の確立
- 予算区分:総合的開発(次世代稲作)
- 研究期間:平成9年度(平成7~9年度)
- 研究担当者:白土宏之、森田敏、高梨純一
- 発表論文等:イネ種子の乾燥土壌中出芽性のスクリーニング、日本作物学会紀事、66巻(別1号)、10-11、1997.